最愛の子ども
★★★★
日夏(ひなつ)と真汐(ましお)と空穂(うつほ)。
夫婦同然の仲のふたりに、こどものような空穂が加わった。
私立玉藻(たまも)学園高等部2年4組の中で、
仲睦まじい3人は〈わたしたちのファミリー〉だ。
甘い雰囲気で人を受け入れる日夏。
意固地でプライドの高い真汐。
内気で人見知りな空穂。
3人の輪の中で繰り広げられるドラマを、
同級生たちがそっと見守る。
ロマンスと、その均衡が崩れるとき。
巧みな語りで女子高生3人の姿を描き出した傑作長編。
おそろしく繊細で、だけど少し皮肉なユーモアもあって、なんとも感想の書きづらい作品。
例えば女子高などで女子同士が疑似恋愛をする、などという話も聞くけれど、そういう経験がないのでその「空気」というのが私にはよくわからない。
この物語に出てくる少女たちの独特の空気、刺さる人には刺さるのかなぁと思いつつ、正直ちょっと引き気味に読んだ。
学生時代のグループには必ず力関係があって押したり引いたりするものだけど、ここに出てくる少女たちは「集団」に関心はなく、あくまでも「個人」、そこにある「恋愛の空気」や「物語」に惹かれている、というところには共感を感じる。
誰もが誰かの物語を見る側でもあるし見られる側でもある。
物語の中心にいる少女3人による「家族」だけでなく、彼らを見つめ見守る少女たち、そしてその親たちの語られなかった物語の方も気になった。