りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

五月の雪

 

五月の雪 (新潮クレスト・ブックス)

五月の雪 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

目を細めると、今も白い雪山が見える――。米国注目のロシア系移民作家が描く、切なくも美しい9篇の物語。同じ飛行機に乗りあわせたサッカー選手からのデートの誘い。幼少期の親友からの二十年ぶりの連絡。最愛の相手と死別した祖父の思い出話。かつて強制収容所が置かれたロシア北東部の町マガダンで、長くこの土地に暮らす一族と、流れ着いた芸術家や元囚人たちの人生が交差する。米国で脚光を浴びる女性作家による、鮮烈なデビュー短篇集。  

ロシア極北の町マガダンの過酷な暮らし。
物資も娯楽も少ない中で楽しみや希望をつないで生きている人たち。
一方、そこを飛び出して海外へ移住した人たちも決してすべてにおいて恵まれているわけではない。自分の中に沁みついた故郷を取り出したり目をつぶってなかったことにしたりしながら、やはり孤独を抱えて生きている。

苦い物語も多いが、ソーニャという少女(作者自身に重なる部分が多い)の希望に満ちた視線が救いになっている。

短編だけれど登場人物が重複する作品もあり、視点を変えて見る面白さもあった。良かった。