りつこの読書と落語メモ

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ふたつの海のあいだで

 

ふたつの海のあいだで (新潮クレスト・ブックス)

ふたつの海のあいだで (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

イタリア南部、ふたつの海を見下ろす小高い丘に、かつて存在した“いちじくの館”。主の血を引くジョルジョ・ベッルーシは、焼失した伝説の宿の再建を夢見ていたが、ある日突然、逮捕される。身勝手な祖父ジョルジョの言動に反発を覚えながらも、次第に心を動かされていく孫フロリアン。数世代にわたる登場人物の声により、この土地の来歴を説き明かす、スリリングな長篇小説。  

以前読んだ「風の丘」もそうだったが、なかなかにバイオレンス。太刀打ちできないほどの巨大な暴力…これはゴッドファザーに通じるものがあるかも。

積み上げてきたものが暴力によって粉々にされる。しかし何度壊されても主人公フロリアンの祖父ジョルジョはくじけない。暴力に暴力で応酬したり投獄された後もまた「いちじくの館」の再建に乗り出す。
そんなジョルジョのことを「狂人」と思う人もいれば、「英雄」と思う人もいる。

しかしこの物語の魅力はそういう力強い部分だけではない。
大人になってもまだ父親ジョルジョの関心をひきたいフロリアンの父クラウス。
またジョルジョから見れば友情に熱いハンスもフロリアンから見れば身勝手で情がない、親になりきれなかった男でしかない。

善人悪人と両断することはできない人間の複雑さも描かれていてそれがこの物語の厚みを与えている。

好きなタイプの物語ではないけれど面白かった。