りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場4月中席昼の部

4/16(日)、鈴本演芸場4月中席昼の部に行ってきた。


・たま平「子ほめ」
・小んぶ「浮世床(本)」
・紋之助 曲独楽
・文菊「権助提灯」
・はん治「妻の旅行」
・にゃん子 金魚 漫才
・小里ん「たらちね」
・歌奴「新聞記事」
・夢葉 マジック
・川柳歌で綴る太平洋戦史」
~仲入り~
・ホームラン 漫才
・燕路「初天神
・権太楼「代書屋」
・二楽 紙切り
・さん助「妾馬」


小んぶさん「浮世床(本)」
産院で落語をやったとき。着物姿でうろうろしていたら赤ちゃんを産んだばかりのおかあさんに声をかけられた。
「あの…お相撲さんですよね?お名前は?」
「え、ええと…小んぶです」
「あ、モンゴル人ですか?」

「あの…お相撲さんに赤ちゃんを抱っこしてもらうと丈夫な子に育つって聞いたことがあって…抱っこしてもらえますか」
そう言われて赤ちゃんを抱っこした小んぶさん。なんかお相撲さんらしいことを言わなきゃいけないと思って、赤ちゃんに向かって「…どすこい」。

…ぶわははは。小んぶさん、おかしい~。
そんなまくらから「浮世床(本)」。
本を読んでる男が他の人がやるのと違って素直っていうか逆らわないのが小んぶさんらしい。
鼻から息が抜ける読み方がおかしくて笑い通しだった。

文菊師匠「権助提灯」
おかみさんが妾の家に言ってあげてくださいと言う時の黒い表情が最高。
そうか。おかみさんは旦那を試したんだ。だから「じゃ行ってこようかな」と言った瞬間にもう家には入れてもらえないことが決まってたんだ。

女たちの黒い表情と裏腹に大声あげて楽しそうな権助がおかしい。
戸をたたいて「うぇーーーーー」って叫ぶだけでこんなに面白いとは。昨日見た「権助提灯」とは大違いだった。
好きなタイプの落語をやる師匠じゃないけど隅々まで心が行き渡っていてきれいだし文句なく面白い。

小里ん師匠「たらちね」
最近の前座さんの「たらちね」って、お経じゃなくてネギを買うところまでやるのがスタンダードになっているけど、もしかするとこれが元なのかな?というような「たらちね」だった。
正直聞き飽きた噺をお手本的に淡々とされるのでちょっと気を失いそうになりつつ…でも奥さんの大仰な物言いに威厳があってそこがやけに面白かった。


川柳師匠歌で綴る太平洋戦史」
元気に歌う川柳師匠が見られて幸せ。寄席に行き始めたころに川柳師匠に当たると困惑しかなかったが(「なにこれ?」「え?戦争バンザイ?いや反戦?」「え?ジャズ?なに?」)、今はもう出てきただけで嬉しい。


さん助師匠「妾馬」
まくらなしで「妾馬」。
八五郎がいかにもごろつきって感じなんだけど、それでも根が正直な男というのが伝わってきて憎めない。
支度金の三百両もつかっちゃってて、お金をほしがるわりにあんまりお金に頓着してないというのもけろっとしていていいな。

屋敷に呼ばれてから、殿様が自分と一緒だと気づまりだろうと言って、三太夫と八五郎でつぎの間に下がるというの、他の人では聞いたことがない。でも確かにその方が自然。
すぐに奇声を発する八五郎に声を小さくしろと言い続けていた三太夫が、八五郎がお鶴の生んだ子供の顔も見られないと言った時に「声が小さいですぞ」と言うのがいいなぁ…。

が「あにさん」と声をかけただけで「もう何も言わなくていい」と言う八五郎にじーん…。
はちゃめちゃだけどちょっと泣ける「妾馬」。初めて見た時ははちゃめちゃの方が勝っていたけど、見るたびに人情味が増している気がする。よかった。

***

昨日の広小路亭の客いじりが辛かったので、客いじりのない今日の寄席はそれだけで安心して見ていられて幸せだった。
にゃん金とか正直面白いと思ったことがないんだけど、自分たちのネタをやって爽やかに帰って行ってくれてそれだけですばらしいと思った。

この間、末廣亭に行った時、私の隣の席にいたおねえさんがとてもきれいな人だったんだけど好き嫌いを思い切り態度に出す人だった。
好きな人の時は激しく拍手して声をあげて笑って、そうじゃない人の時はぱらぱらの拍手でつまらなそうに見ていて時々ため息をついて、嫌いな人の時は拍手もしないし一度も顔をあげずに目を伏せるか席を立つ、というのが徹底していて、正直不愉快だった。
やっぱり寄席を見に来てるんだから好きな人の時に大きな拍手をするのはいいとしても、そうじゃない人の時に何もそこまで差をつけなくてもいいじゃないか、と。

目に入れるのも嫌なほど嫌いという人が私もいないわけじゃないけど、それでもやっぱり舞台に目を向けて最初と最後の拍手はしなくちゃ、と彼女の姿を見ていて思ったのだった。

でも昨日みたいなことがあると、やっぱりほんとに嫌だなぁと思う時は席を立った方がいいのかもしれない、と思った。
ほんとはそういうのも含めて楽しめるようになったら一番いいんだろうけど、好き嫌いが激しいし心が狭いからなかなか難しいな。