りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

上野広小路亭4月中席前半昼の部

4/15(土)、上野広小路亭4月中席前半昼の部に行ってきた。


・昇咲「子ほめ」
・金かん「道具屋」
・鯉輪「権助提灯」
・里光「紀州
・一矢 相撲漫談
・夏丸「茄子娘」
・文月「出来心(前半)」
・南玉 曲独楽
・圓輔「夢の酒」
~仲入り~
・紫「中山安兵衛高田馬場の駆け付け」
・京丸・京平 漫才
・遊之介「お見立て」
・南なん「不動坊」
・小天華 マジック
・遊史郎「稽古屋」


昇咲さん「子ほめ」
初めて見た前座さん。昇太師匠の9番目のお弟子さんだそう。
まだ上下もうまくふれてない感じなんだけど、時々ちょっとおかまっぽく?なるのが面白い。きっと新作派だな。


金かんさん「道具屋」
前にも一度見たことがあるけど、さすが金遊師匠のお弟子さん。前座さんなのにどこか渋い。うまいんだけどこれ見よがしなところとか前へ前へ出る感じが全然ない。なんか気になる前座さんだ。


鯉輪さん「権助提灯」
「落語が二つ続いたからみなさんもうお疲れでしょう。私はもう疲れてます」と出てくるなりいきなり愚痴。
そのあともずっとなんかぐずぐず言っていて、途中から入るお客さんがいるとそれにもいちいち声をかけたりいじったり…そのうち最前列に座ったおじいさんをいじったらこの人がもう喋る喋る。収集がつかなくなってしまった。
「もう私はっきりいってやるきありませんから」って…。なんだろう、ギャグのつもり?でも最初から見てるとほんとにそうだとしか思えなくて「でもこのままさがったら私くびになりますから」と言って「権助提灯」。
客いじりなんかしないで普通にやってほしかったな。


里光師匠「紀州
出てくるときに笑い声が聞こえたから多分鯉輪さんからおじいさんのことを伝えられていたんだろう。
その人のことを警戒しながら?でも変にいじったりせずに「紀州」。
ああ、よかった…ちゃんとした空気に戻してくれて。あのままあっちでもこっちでもおじいさんたちがしゃべりだしたらもうせっかく楽しみに来たけど帰ろうかと思ったよ…。
関西弁だと同じ噺でも印象が違う。より笑いやすくなる感じ。
あと歴史音痴なので三役の説明があったのがよかったな。
こういう空気の時に「紀州」をさらっとやる里光師匠、すてきだった。

夏丸さん「茄子娘」
噺家っていうのは変な商売で変な人が多いです、と夏丸さん。
普通の人だったら「前に出てなんでもいいから5分やれ」と言われたら「私はそんなことできません」と断るところを、つらい前座修行を4年位やってまで仕事としてやろうというんですから。変な人ばかりです。
いろんな仕事がありますけど、一番ストレスがかからないのが「農業」だそうです。もちろんいろんな苦労はあるんでしょうけど、広大な敷地で農作物を育てるという仕事自体にはストレスはない。それはわかるような気がします。
そんなまくらから「茄子娘」。これがもうとってもいい。夏丸さんの淡々とした喋りとこの不思議な噺がとても合っていて独特な雰囲気。
高座に向かって話しかけるおじいさんがいたり、反応が控えめなお客さんに演者の方がいらっとするようなシーンもあったりしたんだけど、それがこう涼しい風に洗われるような雰囲気になった。

うおおお、夏丸さん、すごい!
まくらの途中で例のおじいさんが話しかけたんだけどそれを華麗にスルーして、一切客いじりをしないで空気をがらっと変えた。
なんかもともと好きだけど、惚れ直したよ。すごくよかった。
後ろの席にいたおじさんが「才能のかたまりだな」とつぶやいていて、うれしくなった。


圓輔師匠「夢の酒」
初めて見る師匠。
もうまくらから目が釘付けになってしまった。好きだーー、私この師匠、すごく好き。
右手を怪我されていて、なんでも自転車で転んだとか。利き手なので大変でお風呂も娘さんに入れてもらっているとか。
で、年をとるとできものなんかもできるようになって、この間はお尻にできものができてしまった。自分で見ることもできないし家族に見てもらうのも抵抗があるし…。
それで家族が全員出払ったときに「いまだ」と思い、三面鏡の前で膏薬を貼ろうと四苦八苦。鏡の助けを借りてどうにか貼って「やれ安心」と思っていたら。
帰ってきた奥さんが「ちょっと。鏡に膏薬貼ったの誰?」。

…ぶわはははは。もうこれがおかしくておかしくてツボにはまって笑いが止まらない。私、こういう小噺、ほんとに大好き。しかもそれを淡々と言うものだからおかしくておかしくて。

そのあと、豊臣秀吉が聞いた小噺も披露して、そういう噺に入るのかなと思っていると、やきもちのまくらからなんと「夢の酒」。
これがもう…楽しくて楽しくて!
もしかして南なん師匠の「夢の酒」はこの師匠から?違うかな。
でも印象は違っていて、こちらの大旦那は本当の酒好きで、夢の中に入ってからも「お酒を召し上がっていただいて」と言われると、小言そっちのけで「それなら一本いただきましょう」と明らかにウキウキ。
でも「湯が沸くまで一本目は冷やで」と言われると「冷やはいけません。それでしくじってますから。冷やはいけません」。
サゲの一言にも、あー夢なんだったら飲んでおけばよかったなぁ、という酒飲みの実感がこもっていて、おかしかったー。

すごく好きだ、この師匠。また好きな噺家さんが増えてしまった。うひょひょ。


京丸・京平 漫才
笑いが控えめなお客さんに客いじり爆発。
ちょっとネタをやっては「これでも笑わない」「昨日のお客さんは笑ってくれたのに」「ふつう女性は笑うのに」「若い女性が笑ってくれるけど今日は若い人がいない。おばあさん、おばさん、おばあさん…」。
確かに笑わないお客さんだったかもしれないけど、面白ければ笑ってたし、あんなに責められたら苦痛でしかないよ。狭い空間で個人攻撃されてつらかった。
もうほんとに終わってほしくて最後は無理に笑って拍手してようやく帰ってくれた。終わった後、何人かで顔を見合わせてしまった。
うけなかったらネタだけやってすっと帰ってほしい…。地獄のような時間だった。

※ほんとにいやだったなぁ、あれは何だったんだろうと思って検索したら、どうやら客いじりはこのコンビの「得意技」らしい。あれを芸としてやっていたのか?あまりにウケないから度を失ってああなってしまったのかと思っていたたまれない気持ちだったんだけど、あれが芸風?えええ?いやな芸だな(笑)。

南なん師匠「不動坊」
あんなにも笑わないことを責められるとほんとに私たちが悪いんじゃないかという気持ちになってしまうけど「お客さんが来てくれたっていうんで楽屋一同大喜び」といういつもの言葉に救われる。
ううう、楽屋ではきっと「今日の客は笑わないよ」と言いあっているんだろうけど(明らかにそう聞かされた風で強張った表情で出てきた師匠もいた)、でも嘘でもそう言ってくれたらほっとするよ…。

南なん師匠の「不動坊」は何回も見ているけど、いつもよりちょっと陽気な「不動坊」でそれにもなにか慰められた。
攻撃的なところがまったくなくて穏やかで優しくて楽しい南なん師匠の落語。いいなぁ。
どっと笑いが起きなくても、心の底から面白いと思ってるお客だって中にはいるんだから、全体の反応にあんまり左右されないでほしい。そういう意味で南なん師匠は本当に真摯に自分の落語をやってくれるからいつでも安心して見られて幸せな気持ちになれる。


遊史郎師匠「稽古屋」
桜田淳子復活を祝って?変な替え歌。ぶわははは、なんだこれ。妙にうまくてだけどそれが噺に何も関係ないのがおかしい。

鳴り物入りの「稽古屋」。歌がとてもうまくて三味線に合ってて気持ちいいし、踊りのしぐさもとてもきれいでいいなぁ~。こういう噺をトリでやるってすてき。それもこうしんなりしていて気負った感じが全然なくて、ただひたすらに軽くて楽しい。
好きだな、この師匠も。

途中でかなり心が折れたけど最後まで頑張ってよかった。楽しかった。