りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

みなと毎月落語会 柳家小三治独演会

4/14(金)、赤坂区民センターで行われた「みなと毎月落語会 柳家小三治独演会」に行ってきた。

 

・はん治「ろくろ首」
小三治「転宅」
~仲入り~
小三治「小言念仏」


はん治師匠「ろくろ首」
わーい、はん治師匠。「おなじみのおはなしです」と始まったので、「妻」だろうと思っていたら、なんと「ろくろ首」!うれしい~。はん治師匠の「ろくろ首」とっても久しぶり。ほんとにねぇ…もっと古典をやればいいのに、と思うのですよ。面白いんだから。
おじさんになかなか言いたいことを言えない与太郎。「はっきり言ってみろ」と言われても「おもにょにょ…がほしい」。「なんだ?息がもるじゃねぇか。はっきり言え」「じゃあいうけど…およめさんがほしいーーーーーおよめさんがーーー」。
切羽詰まった叫びに大笑い。

婚礼の晩になかなか寝付けない与太郎が、お嫁さんのことをうっとり見ていると、首がのびていくところ…黙って目線が動くだけなのに、とってもこわい。そう、結構こわいんだ、はん治師匠の「ろくろ首」。
とても楽しかった。この噺、大好きなんだよね。


小三治師匠「転宅」
青山高校に行っていたので、このあたりにはなじみがあるという小三治師匠。
高校生の時、屋上に上がってお昼を食べていると、神宮球場のスコアボードが見えた。ちょうど早慶戦をやっていて慶応のピッチャーがその後巨人の監督になった藤田。早稲田の方が…こんな話をしても今日のお客さんはみなお若いからわからないでしょうね。

…いやいや、藤田監督はすごく好きだったので、選手時代は知らないけど知ってます!
思わず身を乗り出してしまう。

それから話はどんどん脱線していき、自分の父親は校長で天皇を「神様」と言い切るような人間で、毎朝庭から皇居に向かって手を合わせていて、自分も付き合わされたこともある、と。一応父親に合わせて手を合わせたもののどうしても気になることがあって父親に向かってある時聞いてみた。
「ねぇ、天皇って神様なんだよね?」
「そうだ」
「だったら、神様はうんこするの?」
自分としてはどうしても気になるポイントだったのだが、父親は答えてくれず頭をポカリと叩かれた。
最近になって天皇にお会いする機会があったけれど私は大人なのであえて聞いたりはしませんでした。「あの…うんこはしますか」なんてね。

人間国宝になってそんなこと聞いたらほんとに驚くわー。
でもまだそんなことをもちろん冗談だろうけど言ってる師匠がかわいい~。

で、「あれ?なんでこんな話になったんだろう?」と言いながら、そういえば赤坂見附の方には池がありましたけど今もありますか?
あそこの池で私はボートを練習してボートがげるようになりました。あと、魚釣りもね。あそこにはせこい魚しかいないんですけど、でもあそこで釣りも覚えました。
あ、そういえば急に思い出しました。おふくろがそれに付きあってくれたことがありました。着物を着てね、一緒にボートに乗って。私は釣りをしたいんでおふくろだけ岸でおろそうとしたんですけどね。ボートを岸につけたらロープで固定しないといけないんですけどそれを知らなくてね。適当な場所につけておふくろだけおろそうとしたら、ボートがふわっと岸から離れだしましてね。おふくろはかわいそうに…池にぼちゃん。着物のまま落ちちゃいまして。
濡れたまま…電車に乗って帰ったんですね。今思えばかわいそうなことをしました。

「で、あれ?なんでまたこんな話をしたんだろう。あ、そうそう。ここのホール。その高校時代に、文化祭でこのホールを使ったんですよ。1年生の時のクラスで演劇をやってそれが『湖の娘』っていう劇で…私は父親役だったんですが、湖のそばに住んでいてそこに復員兵がやってきて二人で酒を飲みながら話すんですが…実はその父親には戦死した息子がいて、その復員兵がその息子の事を知っていて二人で話す…まだ戦争が終わって1年ぐらいしかたってないときでしたから、そのシーンでお客さんがみんな泣きだしてね…あれは忘れられない思い出ですね…。思えばあの時私は役者になりたかったのかもしれない」

とりとめもなく話をしていたけれど、でも本当に戦争は嫌だ、戦争なんかしちゃいけないんだ、という師匠の気持ちが伝わってきて、胸を打たれた。
私は小三治師匠がそういうことをはっきりと言うところが本当に好きだし尊敬できるし同じ気持ちでいることにほっとする。

まくらが長すぎたんだろう。
途中で幕の後ろから何かコツコツ叩いている音が。これはきっと「もう時間が」という合図だったんだろうけど、師匠は気づかず。でもさすがにまずいと思ったのか「転宅」。
この日はすごく席が良かったので表情がつぶさに見られて、どろぼうが鼻の下を伸ばすところがもうかわいくておかしくて…。
やっぱり小三治師匠ってすごく表情が豊かなんだなぁ、と改めて思ったのだった。


小三治師匠「小言念仏」
出てくるなり「みなさんもお気づきかと思いますが…時間がありません。なぜかといえば私が…長く話しすぎたせいで…合図をしてたらしいんですけど全然気づかなかった…。本当にすみません。…ぶわはははは!」

その後も少しだけ話をしてそれから「小言念仏」。おお、ちゃんと二席やるのね(笑)。
隣のおばあさんたちは師匠の「小言念仏」が見たいと言っていたから大喜びだった。
私もこんな近くで「ばぁ~」が見られてうれしかった!