りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本余一会 さん喬一門 in 鈴本丸

 

3/31(金)、「鈴本余一会 さん喬一門 in 鈴本丸」に行ってきた。

・一門真打口上
・さん喬「時そば
・左龍「長短」
・喬志郎「家庭芸者」
喬太郎「任侠 おせつ徳三郎」
~仲入り~
・小傳次「唖の釣り」
・喬之助「猫と金魚」
・さん助「黄金餅


一門真打口上(さん喬師匠、喬太郎師匠、左龍師匠、喬之助師匠、喬志郎師匠、小傳次師匠、さん助師匠)
口上があるなんて当日プログラムを見るまで知らなかった!
開場17時半を開演時間と間違えて早退して来たんだけど、その甲斐があったなぁ。
こういうサービス精神が旺盛なところがさん喬一門の好きなところ。得した気分。


さん喬師匠「時そば
そして出てくる順番もいつも自由なのがさん喬一門会。それにしてもさん喬師匠が一番手っていうのはさすがにすごすぎませんかと思ったら、なんとこの後に独演会が控えているさん喬師匠。昼間同じ鈴本で独演会やってこれに出てその後また独演会って…気力と体力と精神力がすごすぎる。

さん喬師匠の「時そば」は何回も見たことがあるけれど、いつもとアレンジを変えてゆったり自由な「時そば」。さらくちという出番を楽しんでる感じ。


左龍師匠「長短」
前の日に見たさん喬師匠と同じ形の「長短」だった。得意の顔芸でなんともいえずおかしい。


喬志郎師匠「家庭芸者」
師匠、龍兄さんと続いて私って…私はいったい何をやればいいんでしょう?ちゃんとバトンを繋げるのか不安です。というかそもそもバトンを受け取れたのかっていう不安も。
なんて言いながら、ヘンテコな「味噌豆」のあとにヘンテコな新作。
うーん…。なんか噺の展開が意味不明だしいろんな箇所に必然性が感じられなくて、しかもシュールというんでもなく、なんか見ていていたたまれなくてつらたん…。


喬太郎師匠「任侠 おせつ徳三郎」
最初にあがった師匠が十八番の「時そば」で、その次に左龍兄さんの「長短」でたっぷり、その後の喬志郎でみなさんを一気に不安に陥れるという…この三席だけでもさん喬一門の多様性を楽しんでいただけたかと思います、と喬太郎師匠。
わはははは。何かこうちょっと異様な雰囲気になった客席をぐいっと戻したのはさすが。
噺が始まって、お、「花見小僧」かと思っていると、そこに前に出た「味噌豆」や「家庭芸者」のフレーズを取り入れたりと自由自在。そしてそのまま「おせつ徳三郎」に…と思いきや、途中から、え?なに?という驚きの展開で、「任侠 おせつ徳三郎」。
客席の反応を伺いながらこういう展開に持って行けてしまうのがすごいなぁと思いつつ…最近私はこういうグイグイ系がちょっと苦手。


小傳次師匠「唖の釣り」
面白かった。この噺、すごく面白いよね。放送禁止用語が出てくるからなかなかやりづらいんだろうけど、もっと寄席でかかってもいいのにな。
やたらと陽気で声の大きい与太郎がおかしかった。


喬之助師匠「猫と金魚」
この1カ月ぐらい師匠のお供でアメリカを横断してきました、という喬之助師匠。各地の大学で日本語を勉強している生徒さんに向けて落語やワークショップをやったり、合間には日本人学校や老人ホームの慰問で落語をやったり。
高校、それもビバリーヒルズ青春白書そのまんまみたいな生徒たちの前で落語をやった時、出て行く前に司会をした先生がさん喬師匠のことを「日本で5本の指に入る名人」と紹介。
落語の後に質問コーナーがあったんだけど、一人のハンサムな学生が「さん喬師匠は二本で5本の指に入る名人ということですけど、そんな名人がこんなアメリカの片田舎にいて大丈夫なんですか」と質問。
さん喬師匠はまじめなのでそう言われたら困ってしまってかわせなかった。すかさず喬之助師匠が「大丈夫です。まだ4人が日本に残ってますから!」。

…ぶわはははは。最高!

そんなまくらから「猫と金魚」。
ありえないぐらい粗忽な番頭が喬之助師匠にぴったり。楽しかった~。


さん助師匠「黄金餅
前にあがった喬之助師匠が「トリに上がるさん助はさん喬一門の秘密兵器ですから。できれば最後まで秘密にしておきたかったんですが」と言っていたんだけど、トリは待ってましたのさん助師匠。
だいたい一門会の時のさん助師匠はさらっと軽い噺で終わることが多いので、この順番はファンにしたらとっても嬉しい。

まくらなしで「黄金餅」に。
さん助師匠の「黄金餅」は前に池袋の燕弥師匠との二人会で見てすごく良くてまた見たい!と思っていたので嬉しい。そしてあの時よりたっぷりで、荒れはてた寺の酔っぱらい坊主の怪しげなお経もあって、すごくよかった。

言いたてのところも各地スィーツ巡りなのもとっても楽しくて、そのあとに「言いたてが終わってほっとしてるんじゃないよ」と自分で言ったのもおかしかった~。

金兵衛が西念の死体を樽に入れて運びながら「俺はもう貧乏暮しはいやなんだよ。あんな長屋にもういたくねぇんだ。この金を元手に何か商売をして…それでかかあを持って”あなたや”って言われてぇんだ」と言うのがすごくよくて、金兵衛のとった行動を許せる気持ちになる。
焼いた骨の中から金貨を探すしぐさにも、狂気と必死さの中にもちょっと笑える要素もあってすごくよかった。

明るくて暗くて気持ち悪くてでもなんか身につまされて。さん助師匠の落語の私の好きな要素が全部つまっているこの噺。一門会のトリで見られて満足だった。

仲入りの後「もうここで帰ってもいいぐらい」と言ってるお客さんもいたけど、私は後半の方が断然面白かった。