りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場3月中席夜の部 柳家小八・真打昇進襲名披露興行

3/30(木)、鈴本演芸場3月中席夜の部 柳家小八・真打昇進襲名披露興行 に行ってきた。


・にゃん子・金魚 漫才
・さん喬「長短」
・一朝「蛙茶番」
仙三郎社中 太神楽
馬風 漫談
・市馬「長屋の花見
~仲入り~
・真打昇進襲名披露口上(喬太郎、木久扇、小八、小三治馬風、市馬)
・木久扇 漫談
小三治「小言念仏」
・正楽 紙切り
・小八「大工調べ」
 
さん喬師匠「長短」
苦手な方の「長短」だった。同じ噺でもやり方によって好きな時と嫌いな時があって、あと同じ噺家さんでも噺によって好きな時と嫌いな時があるの、面白い。
 
一朝師匠「蛙茶番」
刈り込んで短めなのにたっぷり面白い。一朝師匠の落語はほんとにスカっと楽しい。最近一朝師匠がより弾けている感じがして、楽しくてしょうがない。
 
市馬師匠「長屋の花見
こちらも刈り込んで短め。穏やかであたたかく楽しい。
 
真打昇進襲名披露口上(喬太郎師匠:司会、木久扇師匠、小八師匠、小三治師匠、馬風師匠、市馬師匠)
司会の喬太郎師匠のほどのよさったら。ふざけるのとまじめにやるのとのバランスの妙。
木久扇師匠には物まねを振って、市馬師匠には相撲甚句馬風師匠にはその合いの手。これがおめでたくてすごくよかった。
 
小三治師匠の口上。
こいつはほんとに気の毒なやつで。真打昇進が決まっていたのに、昨年の5月に師匠の喜多八が身罷って引き取り手がないと言うから私が引き取りました。
「小八」という名前は喜多八がニツ目に上がるときに私が考えた名前で、字数もいいし大きく書いても小さく書いても形がよくてすごく思い入れのあるいい名前。喜多八には真打になっても使ってもらいたかったけど、あいつときたら鈴本の先代の支配人に「喜多八」って名前がいいよと言われたらあっさり変えやがった。ほんとに嫌なやつでしょう?とにやり。
ろべえが真打に上がるにあたって名前をどうしたらいいでしょうかと来た時、自分でいくつか候補を挙げた中に「小八」があったので、私は迷うことなく「これがいい」と言った。
喜多八はへんてこな奴で落語もへんてこででもそれがとてもいい味になってお客様も大勢ついてくださって…その弟子でこいつもやっぱり師匠譲りでへんてこで…でもこれからますますよくなっていくでしょう。お客様にはこれからもどうか末長く見守っていただきたい。
 
そう言って深々と頭を下げる小三治師匠の姿にじーん…。
真打昇進を前に喜多八師匠が亡くなってしまってろべえさんがかわいそうでならなかった。
小三治師匠が師匠として口上に並ぶところを見たいという気持ちももちろんあったけれど、それ以上にろべえさんが小八師匠になる晴れの姿を見たい、応援したいという気持ちで今回のお披露目に行ったのだけれど、小三治師匠がろべえさんのことを見守ってくれているというのが伝わってきて、ああ…よかった…と思った。
素晴らしい真打披露口上だった。
 
小八師匠「大工調べ」
こんなに大勢のお客様が来てくださったのは、小三治師匠と喜多八師匠のおかげ。本当にありがとうございます、と頭を下げた小八師匠。
残念なことに喜多八にお披露目に出てもらうことは叶わなかったですけれど、でもきっと今日も来てくれていると思います。
そう言って斜め上の方を見る小八師匠。
今日はそんな師匠の力をお借りして噺をやりたいと思います。
 
そう言ったあとに、「あーなんで自分でハードル上げるようなこと言っちゃったんだろう…。やりづらくなっちゃった。あーやっぱり…自分で思うように…思い切りやります。」と言って、がははっと笑ったのが…ろべえさんらしくてすごくよかった。
そうだよー。おっちょこちょいで明るくて抜け作(失礼!)なのが、ろべえさんなんだから。みんな心配しながらも応援してるんだから。思い切りやったらいいんだよー。
 
そんなまくらから「大工調べ」。
小八師匠が「大工調べ」ってすごい意外。でもすごくいい。
啖呵もすごい早口で若々しくてよかったんだけど、なによりも与太郎さんがバカなだけじゃない、なんとも味があってとてもチャーミング。
一時期落語がとても陰気になって師匠の呪縛から離れられていないのではと心配になったりもしたのだけれど、口上の席で飛び交うブラックなやりとりに首をすくめてびびっていた小八師匠の内面が落語にもにじみ出ていて、無理に背伸びをしていない、なにかこう吹っ切れた感じがあって、とてもよかった。

これからどんな噺家さんになっていくのか、とても楽しみだ。
ってじじいみたいなこと言ってるな、あたし。