りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治一門会 三鷹市公会堂光のホール

 3/4(土)、三鷹市公会堂光のホールで行われた「柳家小三治一門会」に行って来た。


・小はぜ「道灌」
・禽太夫「くしゃみ講釈」
~仲入り~
・そのじ 寄席囃子
小三治「小言念仏」

 

小はぜさん「道灌」
前方に徹して基本通りの「道灌」。独自のクスグリとか入れてないのにちゃんと面白い。
前座時代、小はぜさんの「道灌」を何回も聴いたなぁ。なんて欲のないきれいな落語をする人だろうと思って好きになったんだった。


そのじさん 寄席囃子
この間のきゅりあんの時にもやった噺家さんの踊りについての話。「噺家さんの中には踊りを踊られる方が多くいらっしゃいます。その中には上手な方。それなりの方。いらっしゃいますけど、私は気を付けて見ないようにしております。以前ある方が踊ってるところを見ておりましたら、気取ってくるりと回った姿が…もうなんともいえない哀愁がありまして、私それがツボにはまって笑いが止まらなくなってしまって、最初から最後まで歌うことができず三味線だけになったことがありました」。
きゅりあんでは「普通の方」と言ってそれ以上はおっしゃってなかったんだけど、「哀愁」って…おかしい~。最高。


小三治師匠「小言念仏」
都知事のことや豊洲移転のことについて話し出したら止まらなくなってしまった小三治師匠。名前が出てこなかったり話していて気持ちが沈んできたりして「この話はやめましょう」と言うんだけど、「いやでもほんといったら大事なことですよ」「落語なんかより大事です」とやめられない。 

そのうち「私に新たに病気が発見されました」と。まだ誰にも言ってないけど、ここは三鷹ですから言っちゃいますけど…といって、「永六輔と同じ病気です。ええと…バセドー氏病」。
ええ?バセドー氏病?!永六輔さんってそうだったっけ?
最初の症状は筋肉が堅くなって動かしづらくなるんです。私それで気づきまして。そのうち症状が進むと手が震えてくるんです、湯呑を持ってもその手が震えて…。と言ってやってみせるとお茶がこぼれて「何もそこまで震えて見せるこたぁなかった」。
なんて言ってると小はぜさんが意を決したように飛び出してきてなにやら紙を師匠に見せると「え?ああー?いいんだよ。そんなの。え?なに?あーーマネージャーからで”師匠はバセドー氏病ではありません”って。いやあいつはね…まぁ心配してくれてるんですけどね。あれ?わたし、バセドー氏病って言ってました?違いました。ええと…なんていったっけ。横文字で。脳からくるやつで。ほらあれ。ほら。」

パーキンソン病
あれなんていったっけって言ってる中でこの名前も出てきたみたいだけど、師匠はなんかぴんとこないようで。
「薬飲み始めたら効くんですよ、これが」と。「ま、聞いてもこの程度ですが」。

自分はこれから先どうなっていくのかわからない。
先代の文楽師匠は「名人」と呼ばれた方である時高座に上がっていて登場人物の職業が出てこなくなってしまった。しばらく絶句して「勉強してまいります」と頭を下げて高座を降りてそれっきりもう高座に上がることはなかった。それを見て自分は「さすがは名人だ」と思った。
私はどうでしょう。時々あるんですほんとの話。登場人物の名前が出てこなくなったりすることが。はっつぁんだかくまさんだか分からなくなって名前が交互になっちゃったり。そういうときはさーーっと血の気が引くんですけど。でもなんとかごまかしてやっちゃう。
私もいつか文楽師匠みたいに頭を下げて降りるときがくるんでしょうか。それとも…私は名人じゃないからそういうことはこれから先もしないんでしょうか。

なんて言ってて、「もうこの話はやめましょう」とこの間と同じく船村徹の話に。歌ったり、名前が出てこなかったり、また歌ったり。
そのうちおそらく幕のところからマネージャーさんが合図を送ってきたのか「わかってるよ。わかってますよ。時間がおしてるんでしょ。わかってるって。…みなさんだって…これで帰っても別にやることもないでしょ」。

…ぶわはははは。もう小三治師匠、最高だよ。
その後もしばらく歌ったりしてたけど、陰陽のまくらから「小言念仏」。さすがに落語やらずにおりるわけにもいかないと思ったのかな。

「小言念仏」だとがっかりする人もいるみたいだけど、私は大好き。だってほんとにチャーミングなんだもん。
赤ん坊に小言を言いながら「ばぁ」ってやるところ。かわいいー!

人間国宝」の落語を楽しみにしてきた人には気の毒だったけど、自由に振る舞う小三治師匠が見られて私は満足だったな。