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りつこの読書と落語メモ

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屋根裏の仏さま

 

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス)

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

100年程前、夫となる人の写真だけを頼りにアメリカに嫁いでいった日本の娘たち。失望とともに結婚生活をはじめ、厳しい労働を強いられながら、子を産み育て、あるいは喪い、懸命に働いて、ようやく築いた平穏な暮らしも、日米開戦とともにすべてが潰え、砂漠のなかの日系人収容所へ―。「わたしたち」という主語を用いて、女たち一人ひとりの小さなエピソードがつぎつぎと語られるうち、その小さなささやきが圧倒的な声となってたちあがる、痛ましくも美しい中篇小説。  

 「写真花嫁」として日本からアメリカに渡った少女たち。
相手の写真と手紙だけを頼りに今より少しでもいい暮らしができると信じて不安と希望に胸をふくらませて。
しかし彼女たちを待っていたのは写真とは似ても似つかぬ男たちだった。
過酷な労働、差別、暴力、出産。逃げ出したくてももう日本には戻れない。夫に逆らってはいけない、不平不満を言ってはいけない、あるもので満足しなければいけない。
心の中にある故郷だけを心の支えに生きる日々。
それでもどうにか「家族」になり、そんな日本人家族が集まった日本人町で、ささやかな幸せをつかみかけたかと思った矢先に戦争が起きる。
「スパイ」の疑いをかけられて彼らは一斉に収容所へ連行される。


ひたすら耐え続けた彼女たちの声が幾つも幾つも重なりうねりになって襲いかかる。
彼らのいなくなったあとの、不在がなにより恐ろしかった。彼らがしたこともしなかったことも、その存在さえも忘れられてなかったことにされる悲しさ。


特定の主人公はなく「わたしたちは〇〇だった。」という文章が輪唱のように次々繰り返されていくことによって一枚の絵のようになって心に迫ってくる。
読んでいる間、とてもしんどかった。