りつこの読書と落語メモ

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キャッツ・アイ

 

キャッツ・アイ

キャッツ・アイ

  • 作者: マーガレットアトウッド,Margaret Atwood,松田雅子,松田寿一,柴田千秋
  • 出版社/メーカー: 開文社出版
  • 発売日: 2016/12
  • メディア: 単行本
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 ★★★★★

主人公の女画家イレインが回顧展を開催するためにふるさとトロントに戻るところから、回顧展が終了しヴァンクーバーへ帰るまでの期間が作品の設定である。アトウッドは幼少時代をケベック州北部で過ごしたが、その時の体験は彼女のどの作品にも色濃く反映されており本作も同様である。少女時代に恐怖のいじめを受け、自分が無価値で無意味な存在と思い込まされたトラウマを絵画に表現することでサバイバルをはかり、憎しみの呪縛から自分自身を救い出していく画家半生の物語。完成までに四半世紀を要したという本作はアトウッドの自伝的要素が強いと考えられている。追憶によって現在と過去が共存するようになり、読後に読者の胸に深い余韻を残す。

画家として成功したイレインの半生が語られる。
少女時代をトロントで過ごしたイレインはそこでいじめに遭い、その傷が大人になった今も疼く。
いじめの首謀者であったコーデリアとは高校生になってからも関係は続き、ある時から立場が逆転する。

子ども時代の閉塞感や、自分が有利に立った時に沸き上がる残酷さなどがリアルでぞくっとくるが、イレインの少女時代は決して陰鬱なだけではない。
幼少期の想い出は風景や遊びなどを軸に色鮮やかに描かれてとても美しい。

また彼女はそのトラウマを絵画に表現することで昇華させていく。
一方コーデリアの方は学校をドロップアウトし一時は女優として花開くように見えたが、精神病院に入り落ちぶれていく。

思い出すことすら禁じていた場所を訪れたイレインが達する境地が胸を打つが、この後も人生は続いていくことが暗示され、ここが終着点ではないということを示唆している。

自伝的要素もきっとあるのではないかと思える、静かだけど凄みのある物語だった。

マーガレット・アトウッドはやっぱりすごい。