りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭正月二之席夜の部

1/11(水)、末廣亭正月二之席夜の部に行ってきた。
 
喬太郎「茶代」
・南喬「牛ほめ」
・権太郎「代書屋」
・美登・美智 マジック
・小満ん「馬のす」
・金馬「七草
~仲入り~
・太神楽社中 寿獅子
・小袁治「紀州
・一朝「湯屋番」
・小さん「親子酒」
・正楽 紙切り
小三治 まくら
 
喬太郎師匠「茶代」
「寄席はまだお正月ですけどコンビニはもう恵方巻ですね。
コンビニではもうしょっちゅう恵方巻の予約やってる感じがします。3か月ぐらい。
だいたい恵方巻っていうのはなんなんですかね。
一方を向いて恵方巻をまるのまま何も言わずに食べるって…。
太巻きは切ってくれよ!それでお茶ぐらい飲ませろよ!」

場内大爆笑。
その後も、八千代銀行について熱く語り、これは落語はやらないのかなと思っていると「茶代」。初めて聴いた噺。
商用で江戸へやってきた二人。主人がお供の者に「江戸では六文から八文ぐらいは茶代を出さないといけない。これは八文出してもいいなと思う時と、こいつには六文で十分だんべと思うときがある。主人である私の思いがお前に伝わらないと面白くないからこれからは六文の時はお前のことを六助、八文の時は八助と呼ぶから。それを二人の間の暗号にしよう」と決める。
 
ある茶屋に入って主人が出て行こうとすると店の主が「雨が降って足元が汚れております」とわざわざ拭いてくれる。
これは八文だなと思い、「お代はお供の八助が払いますで」と言って先に出ていく。
それを聞いていたおかみさんが「お供の人は六助だったと思うんですが」というと、「そうか。それで茶代を伝えてるのか」と気づいた店の主。
お供の者に向かって「百助さん」と呼びかける…。
 
落語というより小噺だけど、喬太郎師匠がやるとこんな短い噺でも風景が浮かんできてすぐにその世界に入れる。すごい。
 
南喬師匠「牛ほめ」
いろんな噺をしてくれて、みんながやるような噺でも違ったバージョンで聞かせてくれる南喬師匠が大好きだ。
与太郎さんがにへにへご機嫌でかわいい「牛ほめ」。楽しかった。
 
権太郎師匠「代書屋」
ほんとに「代書屋」ばかりだなぁ…。
笑わないと「小三治の客は他の噺家では笑わない」と思われそうだけど、そうじゃなくていつもいつも同じ噺だからなんですよう。
 
小満ん師匠「馬のす」
出囃子が聞こえると胸がときめく。
酒を飲みながらなかなか馬の尻尾を抜いてどうなるかをしゃべらずに、「この間、髪結い床の親方に聞いたんだけどさ。毛が三本しかないお客が来たんだって。”七三に分けてくれ”って注文されて、仕方ないから何べんも二本と一本に分けてたら、一本抜けちゃってね。親方、謝ったんだけど、えらいね。怒らなかったって、その客。で、”真ん中わけにしてくれ”って言ったっていうじゃないの。」って話すのが、たまらなくおかしい。
すっと出てきてすっと噺に入ってすっと帰る小満ん師匠が素敵だった~。
 
金馬師匠「七草
鏡開きですから今日はめったにやられない噺をやりましょうか。
七草」っていうんですけどこれは今は私ぐらいしかやらないんじゃないかな。難しいから、じゃなくてあまりにばかばかしいから。
でもこういう日じゃないと出きない噺ですからお土産代わりに。
 
昔は鏡開きの日には家の前に新しいまな板を置いて家の主が七草トントン刻んだ。その時に節をつけて歌い、後ろに並んだ家族の者も声をそろえて歌った。
歌の内容は、中国から飛んできた鳥が悪い病を運んでこないように。悪い病を持ってる鳥は途中で落ちてくれ、っていうもの。
今はこういう風習はなくなりましたね。
マンションの玄関をあけて、七草を刻みながら家族で大声でこんな歌を歌ってたら、イカれちゃったかと思われますね。
 
そんなまくらから「七草」。
吉原に七越という花魁がいた。絶世の美女で芸事にも長けている。なのに裏を返す客がない。
おかしいと思って主が調べてみると、七越はつまみ食いをするという悪い癖があってそれが客に嫌われてるらしい。
主が七越を呼んで注意すると「申し訳ありません」と恥ずかしがった七越花魁。
それ以来つまみ食いをやめ、そのとたんお客の指名も増えて、あっという間に人気の花魁に。
 
あるとき、お大臣がたいこ持ちなどを引き連れて遊びに来た。
ちょっとはばかりへ…というと、みんなお供についていってしまい、部屋には七越花魁一人。
ちょうどほうぼうの焼いたのが手つかずでおいてあり、人がいないので悪い癖が出て思わずつまみ食いをした七越。
そこへお大臣たちが戻ってきたので慌てて飲み込むと、小骨がのどに刺さってえらい痛がりよう。
何があったか気づいたお大臣。後ろに回って七越の背中をとんとん叩きながら、鏡開きの時の歌を替え歌で…。
 
確かにだからなんなんだっていうようなとりとめもない噺なんだけど、こういう季節にあった噺を聞けるのってほんとに幸せ。寄席ってすばらしい。
 
太神楽社中 寿獅子
今日の獅子はなんかだるそう。これは勝丸さんじゃないかな、と思っていたらやっぱりそうだった。
いよいよ私も獅子を誰がやってるかわかるまでになってしまった…
 
小袁治師匠「紀州
政治の話を挟みながら「紀州」。面白かったんだけど、マックくん、声が小さいよー。あれじゃ後ろの方の人とか老人は聞こえないんじゃないかなぁ。
 
一朝師匠「湯屋番」
「湯屋番」ってたいていの人がやると「がんばってるね」って感じがしちゃうんだけど、一朝師匠だとただひたすらにばかばかしくて楽しい。
「ばかやろう!」と大きな声で言うだけでこんなに笑える噺家さんは他にはいないよなぁ。
ほんとに素敵。
 
小さん師匠「親子酒」
毎度毎度の「親子酒」だけど…。うーん。
 
正楽師匠 紙切り
連凧」の注文に「連凧…ってなに?連なってる?」と切り始め「連凧とは…気が付かなかったな」とつぶやいたのには大爆笑。しかも出来上がった作品がものすごく素敵っていう。すばらしい。
 
小三治師匠
お正月は必ず寄席に来るというお客様がいらっしゃいます。
毎年お正月は寄席に来てるんだ、のべつ来てるんだ、正月に寄席に来ないと始まらないんだとおっしゃってくださる。
それは大変ありがたいんです。ほんとにありがたい。
でも寄席は毎日やってるんです。1日来てもあとの364日は…。
それじゃ寂しいです。何が言いたいかというと、寂しいからもっと来てね、ってことです。
そうですねぇ。春は春の噺が出ますから、春に一度、夏、秋、冬、それからお正月。
…来てくださいね。
 
小三治師匠ににっこり笑われてそう言われたらもう来ます来ます来ますともー。
って言われなくてももっと行ってる。あほのように。もうやめてくれ、と言われかねないぐらい。ふっ。
 
今日、楽屋に入ってからなんか顔がべたつく感じがして、付いてくれてる女の子(マネージャーさん)に「脂取り紙を出してくれ」って言ったんです。
京都で買った脂取り紙を持ち歩いてるんで。
そうしたら女の子が「師匠の顔にはもう脂はありません。だから脂を取る必要はありません。むしろ塗った方がいいくらいです」って言うんです。
あんまりじゃないですか。嘘でもいいから拭いて「師匠、さっぱりしましたよ!」って言ってくれればいいじゃないですか。
 
…ぶわははは。面白い!でも小三治師匠、めんどくさいー(笑)。
 
年末から正月にかけてBSで美空ひばりの番組をやっていて見て、改めて本当にこの人は歌がうまいなぁと思った、と。
自分が歌謡曲を聞くようになったのは春日八郎の「別れの一本杉」を聞いてからと言って、作曲家の船村徹文化勲章を受章したことに触れ、この人がいかに素晴らしい作曲家かということを話す小三治師匠。
自慢ののどを聞かせつつ、途中で「あ、今日は落語はやりませんよ」と言うと拍手したお客さんがいたんだけど、すると「え?この拍手はどういう意味?落語聞きに来たんじゃないの?」
 
私も基本的には落語が聞きたいと思っているんだけど、小三治師匠ならまくらだけでもうれしい。
というのはまくらって元気な時じゃないとできないんだなぁと何年小三治師匠を見ていて感じているから。
結構その場の思い付きで話をするのって大変で、気力と体力があるときじゃないとできないのだろう。
私が小三治師匠を見始めた時、師匠の体調がかなり悪い時だったらしくて、まくらもほとんどなく噺に入ることが多かったから、こうやって話し出して止まらない師匠を見られるのはとてもうれしい。
小三治師匠のまくらは笑わせようとかウケるからやってるいつものアレとかじゃないし。
 
船村徹について熱く語った小三治師匠だったんだけど、なんとなくこう老いていくこととか、いろんなことを諦めながら一つのことをひたすら頑張ってきたっていうことに対するリスペクトや共感があったように感じた。
楽しかった!