りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

桃月庵白酒独演会 本多劇場編

1/10(火)「桃月庵白酒独演会 本多劇場編」に行ってきた。
今年は白酒師匠の会にもっと行くどーと言ったとたんに独演会に行ってしまう私。
チケットサイト(オークションじゃない)をまめにチェックしていたらこの会のチケットを見つけたので行けてしまったのだ。ひゃっほい。

・はまぐり「手紙無筆」
・白酒「明烏
~仲入り~
・白酒「新版三十石」
・白酒「芝浜」

 

白酒師匠「明烏
本多劇場で落語ができるのはとても名誉だし、なかなかやれるもんじゃない、と白酒師匠。
普通じゃ借りられませんから。それなりの収入、社会的地位、信用ってものがないと。だからねこにゃ(この会の主催者さん)もついに信用されるようになったんですね。
昇太兄貴からも言われたことありますよ。本多劇場はやりやすい、すごくいい会場だ、って。紀伊国屋ホールとは大違いだって。
この頃は、落語をやらないような場所や会場でも落語をやるようになってありがたいです。
この間は私はZEPP東京でやりましたね。ひろーい会場ですよ。そこで落語をね。間に合わせで貼ったなっていういかにも安っぽい紙を高座の後ろに貼ってあってね。案の定時間がたったらはがれてきましたけど。
あと今度あるのが六本木での落語会。「ギロッポン寄席」って…もう名前だけで失敗だな、この企画!っていうのがありありですけどね。

…最初からガンガン毒を吐く白酒師匠。
すらすらすらすら言葉が出てくるからおかしくておかしくて。

あと、正月の鈴本の楽屋で春日部をディスった話などから、「裏原宿」「裏浅草」。
原宿なんかぼったくりの服屋がありますから、と。
絵具こぼしたようなTシャツが5000円。しかも穴が開いてるじゃん?え?USED?なにそれ?
もちろん買いましたけどね。
それを着て大学行ったら、だめですね、落研の連中なんて。「あれ?それ破れてるよ!」「違うよ。これUSEDなんだよ」「いやでもまじで破けてるって」
…こういうオシャレがわからないんだから。

白酒師匠と原宿って…全然想像つかないうえに、そのぼったくりの服屋で5000円のTシャツ買うんだ?!
なんかもうすごくおかしいんですけど。

そんなまくらから「明烏」。
基本的には普通の「明烏」なのだった。どうも白酒師匠だと変な期待をしちゃうから、普通だと「え?ふつう?」って思っちゃう。
でも時次郎が散歩に行って近所の子どもと太鼓を叩いて遊んだあと路地を飛んでいた白い蝶に誘われてふらふらっと迷い込んでしまい、八歳の子どもに家まで連れ帰ってもらったり、源兵衛太助のところにやってくる時に、スローモーションのように手を振りながら走ってきたリ(なんとなくこの走り方で、時次郎=ぽっちゃり、のイメージが)、ところどころひねってある。

茶屋のおばさんが無駄に(!)きちんとしていて丁寧なのがおかしい。
「お巫女頭」と呼ばれたおばさんにまわりから「頭コール」が起きるっていうのもばかばかしくて素敵。
さんざん嫌がっていた時次郎が一晩明けて大人になって、声がダンディになっていたのにも笑った。

白酒師匠「新版三十石」
お正月の寄席はいつも以上にその寄席の色合いがくっきり。
自分は鈴本、浅草、東洋館と出ていたんだけど、それぞれ全く違うお客さんで違う雰囲気だった。
鈴本は前売りなので「鑑賞しよう」という落ち着いたお客さん。「小三治まであと何人?」とプログラムをチェックする奥様も多い。
そういう時はわざとたっぷりやって「小三治は来ませんよ」と言ったりする。
この雰囲気に〇〇師匠なんかはみるみるやさぐれていくんだけど、舞台に上がるときにはきゅっと笑顔になるからさすがですね。
浅草はもういつも以上に浅草!何を言ってもきゃーきゃー喜んでる。こっちがなにやろうが何も聞いてない。持ち時間も短いから適当なところで「冗談言っちゃいけねぇ」で降りる。下手したら「こんちは」「おや、誰かと思えばはっつぁんかい」「冗談言っちゃいけねぇ」。これでも拍手がもらえる。
東洋館は浅草に入れなかったお客さんが仕方なく入って来てる。だから全体的にあきらめモード。それでも小朝師匠なんかが出てると「そこまでは我慢していよう」と思うらしい。だから小朝師匠が終わるとお客さんが帰っていく。でもこういうお客さんが帰った後の雰囲気がなんともいえずいい。

私もこの間、東洋館と鈴本のハシゴをしたから、この雰囲気の違いとってもよくわかる。そうそう!とうれしくなってしまった。

そんなまくらから「新版三十石」。これはこの間鈴本で見て大爆笑したんだけど、いやもうほんとにすごい破壊力。腹筋痛くなるぐらい笑った。
浪曲師が携帯に出るところ、マナーモードなんだよね(笑)。もうこういうところがたまらない。そして出たら「あー今高座中。ビレッジバンガードで待ってろ」って。ぶわははは!


白酒師匠「芝浜」
ネタ出しされていたこの噺。
おかみさんが旦那を起こす起こし方が激しくて最初から大笑い。
旦那が河岸に行きたくなくてグズグズいうんだけど、全然聞かないおかみさん。ああだこうだと言い訳をする旦那に、全然負けずに「行け行け」いうおかみさんがリアルでおかしい。挙句の果てには蹴り出してしまう。
旦那が出かけるとそのまま寝てしまうおかみさん。
財布を拾うシーンはなくて亭主が戸をどんどん叩く音で目が覚める
「お前、起こすのが早かったよ」と言われると「え?そうなの?あーだから眠かったんだ」。
「謝らないのかよ」
「なんで謝らなきゃいけないのよ。起こすのが遅かったら謝るけど早かったから間に合ったでしょ?」
「お前は…謝らないなぁ…」
なんかすごくちゃんと「夫婦」なんだよな。フツウの「芝浜」よりずっと夫婦感が出てる。

お酒飲んでどんちゃん騒ぎして次の朝、前の日以上の激しさで旦那を起こすおかみさん。
「仕事に行っておくれよ」。
財布を拾ったという旦那に「夢だよ」と言い張るおかみさん。
「ええ?だってあんなにはっきりした…そんな夢って」
「そういう夢、見ることもあるだろ?」
「うん。あるんだよな…」
説得されてしまう旦那がなんともいえずかわいい。

そして酒をやめて三か月働けば借金は返せる、でも酒をやめなければ三年かかるというおかみさんに「三か月か。三年は無理だけど三か月ならできるかもしれねぇな。酒をやめればほんとに三か月で返せる?」「返せるよ!」。
それから三年たった大晦日。
「三年前の晦日は大変だったな。借金取りをお前が黙ってにらんで帰して」に大笑い。
「働けばいいんだな。働く方が楽だな。」という言葉にすごい説得力がある。

おかみさんが財布を出して事情を話すと「そうだろ?やっぱりそうだよ。ほんとにあったんだよ。だってはっきりしてたもん」と旦那。
お前さん信じやすいから目を見て三回言えばたいてい信じるから。あの時は二回で信じたし」というおかみさんに、がははと笑う旦那。
おかみさんが謝ると「謝ることないよ。かかあ大明神だよ。お前はえらいよ。謝るところじゃないよここは。お前、謝らなきゃいけないときに謝らないのに、謝るところじゃないところで謝るんだな」

うううう。
ものすごく軽くて明るくてばかばかしいのに、すごくちゃんと夫婦で、最後のセリフもかっこつけてなくて、「てへ!」って感じなのに、なんかじーんときてしまった。

今まで聞いた「芝浜」でピカイチに好きだった。これだから白酒師匠はもう!