りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

黒門亭 2860回

1/7(土)、黒門亭2860回第二部に行ってきた。
時松さん、きく麿師匠、小満ん師匠を目当てに行ったんだけど、初めて生で見た右女助師匠もとても好みで、ものすごいお得感!寒空の下、長時間並んだ甲斐があったなぁ。

・市若「元犬」
・時松「河豚鍋
・右女助「真田小僧
~仲入り~
・きく麿「歯ンデレラ」
・小満ん「御慶」

時松さん「河豚鍋
時々うっかりネットで検索してお客さんの書いてるブログを読んでしまうことがある。
というのは私たちの仕事って半年ぐらい前に「この日空いてる?」と電話がかかってきて「空いてます」と言うと「じゃよろしくね~」と言われ、そのまま何の連絡もないまま何か月も過ぎることがある。
主催者側はおそらく演者のスケジュールを抑えたら安心してしまうのだろう。
でもそういう場合でもたいていお客様に向けてはチラシを作ったりサイトに情報を載せてたりするので、自分は何時ぐらいにあがるんだろう?どういう内容の会なんだろう?とネットで検索するのである。
すると個人でやってるブログで自分の高座をかなり辛辣に批判してる記事に当たってしまったりして、かなり痛手を受けてしまう。

ひぃ~。そそそうですよね。このネット社会。ご本人が私のようなド素人が好き勝手にパーパー書いてる記事を目にしてしまうこともあるんですよね。
自分としてはこんな極北ブログ誰も見てないさ~と思っているから好き勝手に書いてるわけで、批評のつもりもないしましてや貶めるつもりもないんだけど…き、気を付けよう。
基本的には「好き!」と思ったことだけ書くようにしてるんだけど、時々いらっとすると悪いことを書いてしまうこともあり…。反省。

そんなまくらから「河豚鍋」。お互いに河豚を食べさせようとする攻防がすごく楽しい。お調子者で猫にまでお世辞を言う一八が鍋の中身を執拗に確認しようとするのがおかしい。
そして鍋がほんとにうまそうで…じゅるり…。とても楽しい「河豚鍋」だった。
時松さんの真打披露目、絶対見に行こう。


右女助師匠「真田小僧
東日本大震災以来、すぐに逃げられるように三階より下に住むようにしていた右女助師匠。でも最近マンションの五階に引っ越しをした。同級生には「三階以下に住むって言ってたくせに」と言われたんだけど、これには訳があって。
自分の部屋のベランダのすぐ近くに電柱があるから、そこから降りることができるだろうと踏んだのである。
とはいえ、電柱の掴まるところって金属でできていて、万が一火事になったりすると持つところが熱いんじゃないかということを懸念。どうしたらいいだろうと考えた末、料理用のミトンがいいんじゃないかと思いついた。それでネットで探して注文。それもオレンジ色のミトン。なぜオレンジにしたかといえば、助けに来てくれた消防士さんの服とお揃いの色だから真っ先に助けてくれるんじゃないかと思って。
同窓会の時にそんな話をしたら「ミトンつけて電信柱は降りれられない」と一蹴された。

で、実はこのまくらは「二番煎じ」をやるつもりで用意してきたらしいんだけど、時松さんに「河豚鍋」をやられてしまったから、できなくなってしまった。
しょうがないから「真田小僧」を通しでやります、と。

右女助師匠を生で見るのは初めてだったんだけど、さらっとした語り口がとっても好み。
父親が金坊の話にどんどん前のめりになってきておかみさんが浮気をしたと思い込んで「チクショー」というのもおかしい。
テンポがよくてリズムというか呼吸というか…それがとても心地よくて聞いていて楽しくなってくる。
真打ちになった時にテレビで見たことがあってその時はちょっとシニカルに感じたんだけど、生で見るとそこも含めてとても楽しかった。
もっと見てみたい。


きく麿師匠「歯ンデレラ」
寿伴さんと花巻の仕事に行って、打ち上げで盛り上がって日帰りはやめて泊まっていくことにした。きく麿師匠は帰りの切符を買ってなかったんだけど、寿伴さんは買っていて、だったらその切符を払い戻してついでに二人分の帰りの切符を買ってきて、と使いに出したのだが、いつまでたっても寿伴さんが戻ってこない。
ようやく戻ってきたと思ったら、花巻駅では帰りの切符が買えなかったので新花巻駅まで行ってきた、と。
タクシーで新花巻まで往復したから金額もかなりかかりその費用も俺が払うんだぞ!とキレそうになったら、寿伴さんがタクシー運転手に「苦しいことから逃げたらだめだ」と励まされ、怒られるのを覚悟で死ぬ気で?帰ってきたと言うものだから、ますます腹が立った、と。

それから老人ホームで仕事をしたときのこと。
反応の薄いおじいさんおばあさんにいつも心が折れそうになるんだけど、そんな時に楽屋まで訪ねて来てくれて「面白かったよ」と言ってくれたおじいちゃん。90歳をこえるというのにとても元気。健康の秘訣を聞くと「歯が丈夫なこと」。歯がダメになると食べられなくなって徐々に弱っていってしまう。自分は歯が丈夫だから何でも食べられる、とがばっと入れ歯をはずして見せてくれた…。

そんなまくらから「歯ンデレラ」。
今から仕事に出るというお嫁さんにあれやこれやと指示をされているお姑さん。
おかあさんの料理は塩辛いから気を付けてくれだの、保育園のお迎えも行けだの、お迎えに行った時祖母だと分かると預けられなくなっちゃうから近所のおばあさんだと言えだの、言いたい放題言われて、ぶうぶう文句。
そんな嫁が出て行くと入れ替わりにやってきたのが近所の友だち。
久しぶりに会った彼女がなんか顔が変わったと思ったら「すごくいい入れ歯に変えた」と。いい歯医者さんだから紹介するわと言われて行ってみると、確かに今まで入れてた入れ歯とは大違いでぴったりきてまったく痛くない。
そんな時、その友だちから合コンに誘われて行ってみると、大金持ちのおじいさんと気があっていい感じに。お互いに盛り上がっていたのだがふと気が付くと夕飯の時間。遅れるとまた嫁にいびられる!と慌てて帰るおばあさん。その時口の中から入れ歯が飛び出して…。

もう最初から最後までおかしくて笑い通し。
嫁と姑の攻防がめちゃくちゃおかしい。「スナックヒヤシンス」もそうだけど、きく麿師匠の女の人たちの悪口って妙にリアルなんだけど相当きついことを言ってもなんか哀愁がちょっと漂っていてそこがたまらなく面白い。よく男の人がやる「あーら奥様」的な嘘くささがないんだ。

あと入れ歯をはずしたあとに口がくちゅっとなるしぐさ…。もうもう!あの顔がたまらない。
小満ん師匠の前の出番で何をやるんだろうねーと友だちと楽しみにしていたんだけど、期待以上の破壊力で楽しかった~。

小満ん師匠「御慶」
小満ん師匠の初夢。散歩していると突然の雨。あわててジャンプ傘を開くと、柄だけ残して傘がぴゅーん!と空高く飛んで行ってしまった。あの傘は…イスラエルにでも飛んで行ったんでしょうか。でも謎の物体がイスラエルに落ちた、というニュースはなかったからおそらく無事だったんでしょう。
くーー。かっこいいっ。なんなのこのかっこよさは。

そんなまくらから「御慶」。小満ん師匠の「御慶」は前に関内ホールの会で聞いたことがあったんだけど、お正月に小満ん師匠の「御慶」を聴ける幸せよ…。
富くじがあたって本当にめでたいお正月を迎えることになった八五郎。おかみさんや大家さんとのやりとりも微笑ましいし、古着屋に行って衣装や刀をそろえるところは見ているこちらもうきうきしてくるし、「ぎょけいっ!」と奇声をあげるのも楽しくて、おめでたさのおすそ分けをしてもらった気分。

落語でしか味わえない世界を満喫。
ほんとに大満足の黒門亭だった。