りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

人生の真実

 

 ★★★★★

この子はあたしたちが面倒を見る。よそにはやらないよ――千里眼を持つ女家長マーサの決断により、赤ん坊はヴァイン家の八人の女たちに育てられることになった。フランクと名づけられた男の子は、戦争の残した傷跡から立ち上がろうとする街で、一風変わった一族に囲まれて大きくなってゆく。生と死のさまざまなかたちを見つめる家族の姿を、英国幻想小説界の巨匠が鮮やかに描き上げた、世界幻想文学大賞受賞作。  

千里眼の能力を持ちながらただひたすらに家族の幸せを願う肝っ玉母さんマーサを中心に、個性的で主張が激しい7人の娘たちとその配偶者からなるヴァイン家。姉妹の中で一番イカれているとされているキャシーが、生んだ赤ん坊を譲るために待ち合わせ場所にいるところから物語は始まる。

最初に生んだ子供も同じように他人に譲ったキャシーだったが、もう同じ過ちは犯したくないと待ち合わせ場所から家に帰ってくる。
家族は「お前に育てられるわけがない」と喧々諤々なのだが、母親のマーサの「分担して赤ん坊を育てることにしよう」という一言で、この赤ん坊は他人に譲らずに自分たちで育てていくことに決まる。
フランクと名付けられたこの赤ん坊は、マーサと姉妹たちの家を渡り歩きながら成長していく。

世界幻想文学大賞受賞の作品らしいが、SFでも幻想文学でもなく家族の物語に魔法の要素がちりばめられている。
第二次世界大戦の傷跡が残るコヴェントリーの町で、死や破壊の影に脅かされながらも、一家はマーサを中心にかたく結束し、さまざまな出来事を乗り越えていく。

戦争で破壊されたコヴェントリーが復興し生まれ変わるように、さまざまな出来事で傷ついた心や人間関係も家族で団結して修復させていく。
死さえも味方につけて生きる人たち。

年越しで読んだ本がこれで「当たり」な気分。
とてもよかった。