りつこの読書と落語メモ

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キャロル

キャロル (河出文庫)

キャロル (河出文庫)

★★★★★

クリスマス商戦のさ中、デパートのおもちゃ売り場でアルバイトをする十九歳の女性テレーズは、美しい人妻と出会う。彼女の名はキャロル。テレーズは恋に近い気持ちを胸に、キャロルに誘われ自動車旅行へ。二人を待つ運命を、彼女たちはまだ知らない…サスペンスの巨匠ハイスミスが匿名で出した幻の恋愛小説、待望の本邦初訳。

驚いた。ハイスミス=イヤミスの女王というイメージを見事に覆す作品。
私、今までハイスミスの小説をちゃんと読めていなかったのかも。すまない…。そんな気持ちにさせられるほど、ここには恋愛が、普遍的な人間の感情の動きがリアルに描かれている。

恋に落ちたばかりの頃は、舞い上がり他のものが何も見えなくなり相手の気持ちが見えずに不安ばかりが募る。
ようやく想いが成就すると、世界は輝き他のものは何もいらないと思えて無敵に思える。
しかしそのままではいられない。お互い背負っているものがあり、さらに「同性愛」ともなれば世間は敵意をむき出しにしてくる。
見捨てられたと感じ何もかもを失って初めて自分自身が、そして相手のことも見えてくる。
痛いほどにむき出しの恋愛小説であるとともに、テレーズという女性の成長の物語でもある。

キャロルの輝くほどの美しさや誇り高さと、主人公テレーズの若さ故の無防備さと残酷さの対比も素晴らしいが、ダニーやアビー等の脇役たちの魅力もあって、物語に深みを与えている。
素晴らしい。

他の作品も読みたいし今まで読んできた作品も読み直したい。