りつこの読書と落語メモ

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ミニチュアの妻

ミニチュアの妻 (エクス・リブリス)

ミニチュアの妻 (エクス・リブリス)

★★★★★

「ミニチュアの妻」:妻をミニチュア化してしまった男の語りによる家庭劇。小型化を専門とする仕事に従事する語り手は、どういうわけか偶然、家で妻をマグカップ大に縮めてしまう。家庭に仕事は持ち込まないと誓ったのに…と、いささか的外れな後悔の念を覚えつつ、主人公は妻を元に戻すべく悪戦苦闘する。「僕のすべて」:語り手はオフィス勤めのゾンビ。人肉を食べたいという衝動と日々戦い、自宅で大量のガラス製品を壁に投げつけては発散している。受付嬢に好意を寄せているが、相手は既婚女性、自分はゾンビ、所詮は叶わぬ恋だと思っていたところ…「キャプラ2号星での生活」:主人公は、宇宙に進出した“新世界連邦”により入植者が送り込まれた星で猛威をふるう数々のモンスターとロボットを相手に、激闘を繰り広げる。なぜ自分はこんな世界にいるのか?なぜ過去数分間しか記憶がないのか?憧れの女性ベッキーとのデートは実現するのか?自分は何者なのか?

面白い!
奇想短編はかなりの数を読んできていて読み慣れている方だと自負(?)しているけれど、これはまたひと味違う。

不条理な出来事を感情を排した文章で淡々と描写しているのだが、なにか不思議な懐かしさが漂う。
一作目の「操縦士、副操縦士、作家」でハートを鷲掴みにされ、「その奇特な人生」シリーズで中毒にされ、ゾンビ物で無力化される。
表題作も良かったけれど、特に好きだったのが「セバリ族の失踪」「角は一本、目は荒々しく」。

人間の感情や行動の摩訶不思議。自分を見失うほどに惹かれる気持ちや常軌を逸した行動。自分のことすらコントロールできなくて自分の気持ちも上手に説明がつかないのだから、ましてや他人のことや他の動物、この世界のことも分かるはずがない。
それでもわけがわからないながらも必死に何かを求め戦っている。
そのわけのわからなさが恐ろしくもあり楽しくもあり懐かしくもあり愛おしくもある。

物語に引きずり込まれメタメタにされ放り出される楽しさを堪能した。
これはクセになるわ〜。
また他の作品も翻訳されますように!