りつこの読書と落語メモ

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日時計

日時計

日時計

★★★★

「忘れないで、これが、わたしたちが長らく待ち続けた最後の時だということを」
世界の終わりを告げる声、
そして「屋敷」は新しい世界への方舟となる――
傑作長篇、待望の本邦初訳。

ハロラン家の先代当主の娘ファニーおばさまがある日邸宅の庭で迷子になり死んだ父親から「世界の終末が近づいているがこの屋敷の中にいれば安全」というお告げを聞く。
自分の息子を亡くし屋敷の持ち主となったハロラン夫人は家に置いていた家庭教師のミス・オグルビーや愛人でもあった図書館室係のエセックス、息子の嫁であるメリージェーンを屋敷から追い出すことを宣言していたのだが、ファニーおばさまのお告げを聞いて、彼らをこの屋敷に残すことを決める。

頭のネジが緩んでいるようなファニーおばさまのお告げをなぜハロラン夫人を始め、疑り深く誰の事も信じないような彼らが妄信的に信じることになったのか、そこがなにかもやもやするところではあるのだが、しかし読んでいる自分自身も、これは絶対世間の笑いものになるパターンだよと思いながらも、いやでもひょっとして…という気持ちにもなってきていて、そこがさすが「魔女」と呼ばれたジャクスンの魔力なのかもしれない。

意地の悪さと乾いたユーモアのバランスが絶妙だ。
誰も彼もグロテスクなほど自分勝手でそれを隠そうともせずにぶつけ合う。
この屋敷の最年少であるファンシーが放つ「私がおばあちゃんを殺してあげようか」という言葉がこの物語の不気味さと奇妙な明るさを象徴してるような気がする。
逃げ出そうとしたジュリアとタクシー運転手との緊迫したやりとりやパーティのシーンでエセックスが村人たちに嘘を言って回る描写など、どうでもいいようなことが後からなんだかジワジワ怖くなる。

果たしてこれはどう終息するのか、悲劇なのか喜劇なのか、ドキドキしながらページをめくったが…さすが最後まで意地悪だ。