りつこの読書と落語メモ

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メタモルフォシス

メタモルフォシス (新潮文庫)

メタモルフォシス (新潮文庫)

★★★★★

その男には2つの顔があった。昼は高齢者に金融商品を売りつける高給取りの証券マン。一転して夜はSMクラブの女王様に跪き、快楽を貪る奴隷。よりハードなプレイを求め、死ぬほどの苦しみを味わった彼が見出したものとは―芥川賞選考委員の賛否が飛び交った表題作のほか、講師と生徒、奴隷と女王様、公私で立場が逆転する男と女の奇妙な交錯を描いた「トーキョーの調教」収録。

すごいな、これ。絶対あなたやってるでしょ?というくらいの臨場感。電車の中で読み始めて「こりゃ電車で読んじゃあかんやつや」とすぐに気づいたけどやめられず。
イタイ描写や目を覆いたくなるような場面が続き途中読んでいて苦痛を感じるが、主人公のストイックで求道者的なひたむきさがユーモアと悲しさを帯びていておかし悲しい。

これでもかとSMのプレイを描きながら、性的な嗜好を越えて、働くこと生きていくことの意味さえも歌い上げる。すごいすごい。
笑ったり呆れたり嫌になったりしながら最後まで読むとなんとなく腑に落ちてしまう。
この作品の方がむしろ芥川賞をとるべきだったのではと思うけど、さすがにダメなのかな。この題材じゃ。

表題作もすごいけど「トウキョーの調教」の方も面白い。
この作家の描く何か方向が間違った努力や我慢や鍛え方、癖になるなぁ。
芥川賞を受賞してからテレビに出たりしている姿を拝見することがあるけど、なんとなくあれもまた本人が「鍛錬」と思ってあえてやっているような気がする。