りつこの読書と落語メモ

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さいごの恋

さいごの恋

さいごの恋

★★★★

海、つまり大海原の音がいま、聞こえてきている。力強い響きを立てて。満潮時の波の音なのだ。風であおられた高い波。それが崩れようとする。まるごと落ちてくる。海のかたまりがどさりと。作曲家ポール。余命を宣告され、妻を離れて、海辺の別荘でただひとり。決行日は今日にしようか、明日にしようかと考えている。それとも、さらにあと少しだけ待つか。残された時間は尽きようとしていた…。

余命を宣告された作曲家が妻と離れて一人海辺の別荘に向かう。死ぬために訪れた別荘で偶然出会った人妻に片思いにも似た淡い感情を抱く。

主人公の意識は途切れがちで、もしかするとこれらの出来事はすべて幻だったのかもしれないと思うほど。
だが不思議と悲壮感はなく、軽やかで楽しささえも感じられるのは、もうすでにこの世から離れようとしている身の軽さゆえなのか、あるいは美しい情景描写のせいなのか。

よく知っているわけでもないのに「いかにもフランス的」なんてことを言いたくなるような、洒落た作品だった。