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りつこの読書と落語メモ

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ジュリエット

 

ジュリエット (新潮クレスト・ブックス)

ジュリエット (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★★

長距離列車で乗りあわせた漁師に惹きつけられ、やがて彼のもとで暮らしはじめる大学院生のジュリエット(「チャンス」)。娘が生まれ、田舎の両親を訪ねるが、父母それぞれへの違和感にこころは休まらない(「すぐに」)。やがて夫は諍いのさなかに漁に出て、突然の嵐で遭難。つねにそばにいてくれた最愛の娘は、二十歳のときに失踪し、行方知れずのままだ。いまやバンクーバーで人気キャスターとなったジュリエットは、ある日、娘の消息を聞く―(「沈黙」)。以上、マンロー版「女の一生」ともいえる“ジュリエット三部作”のほか、ふとした出来事でゆすぶられる人生の瞬間を描いて、マンローの恐るべき技量が冴えわたる短篇小説集。  

 とてもよかった。今までもマンローの作品は読んできたけれど今回は特にぐっときた。

ほんの一瞬の決断、出会い、別れが自分の人生を変えていく。
あれが人生の岐路だったのだと気付くのはそれから何年もたってからだ。

つかんだはずの幸せもいつまでもそこにあるわけではなく、作った家族もばらばらになり、気が付けば一人になっている。

三部作の「ジュリエット」は特に3つ目の「沈黙」がとても辛い…。こんな思いをするぐらいならむしろ子どもなんか持たない方がよかったのではないかとさえ思える。
「人生は甘くないのよ」「人間は所詮は一人なのよ」そんなマンローの声が聞こえてくる。
しかし苦いけれどマンローが伝えようとしているのは絶望だけではない。
静かな諦めの境地に至るジュリエットには逆に励まされたような気さえする。
素晴らしいな、マンロー。これから自分が年を重ねるごとにますます好きになるのかもしれない。