りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場11月下席夜の部(9)

11/29(火)、鈴本演芸場11月下席夜の部に行ってきた。

・ホームラン 漫才
・さん助「しゃっくり政談」
・楽一 紙切り
・扇辰「徂徠豆腐」


ホームラン先生 漫才
「私、安倍総理が”安倍内閣って言うのが気になっちゃうんですよ。あと総理が”アベノミクス”って言うのも気になっちゃうんです。自分で自分をそう言うのってメグっていう子が自分のことを”メグはね。”って言うのと同じような感じがしちゃって」っていうのがすごくおかしかった。
わかる、わかるんだけど、なんでメグ?ぶわはははは。好きだわ、こういう感覚。


さん助師匠「しゃっくり政談」
最近は自己主張の時代ですね、とさん助師匠。
「俺のステーキ、俺のラーメン、俺の居酒屋。この間は俺のクリーニングっていうのを見かけました。こうなるとよくわからない。その点こっちの世界はいいです。そういうのないですから。俺の子ほめを聞け!なんてことは言いません」。
そう言ったあとに「時々終演後にお客様から楽屋に電話がかかってくることがありますあの噺はなんていう演目だという質問の電話であることが多いので、今日はあらかじめタイトルを言っておきます。」というまくらから「しゃっくり政談」。

定吉がお嬢さんと歩いているところが大好き。
「お嬢さん、近所の若い衆さんたちが集まってお嬢さんの噂をしてましたよ。いい女だいい女だって。お嬢さんはいい女なんですか?」
「うるさい。うるさいから黙りなさい。」
「お嬢さん、近所の若い衆さんたちが言ってましたよ。あそこは一人娘だからお嫁に行かないでお婿さんをもらうんだって。お嬢さん、お嬢さんはお婿さんをもらうんですか?」
「だからうるさい。黙って歩きなさい」
「…」
「顔がうるさい」
「…」
「存在自体がうるさい!」

この後一変して昼下がりの不気味な雰囲気になるんだけど、そこからの「ああっ!」だからね…。初めて聴く人は驚くよなぁ。
そしてさん助師匠、変態おじさんの真似がリアルすぎ。「お客さんが引いてる引いてる!」って嬉しそうに言った後「いいのかな。ま、いいか。扇辰兄きがきれいにまとめてくれるだろう」には笑った。
よく笑ってくれるお客さんでノリノリになりすぎたのか?サゲを噛んでしまったさん助師匠「ああっ、サゲを間違えた」と言って言い直したあとに「俺のしゃっくり政談でした」と言って下がって行った。ぶわははは。


楽一さん 紙切り
カストロ議長」のお題にみるみる固まる楽一さんに会場は爆笑。
でもぽつぽつと切り始め、またしばらく固まり…前の方から「がんばれ!!」と声がかかる。
すると「がんばれのお声をいただきました」。そのあとに「この間は、無理しないで!だったんですけどね」。
ぶわはははは。もうほんとに最高だわ、楽一さん。腕はどんどん上がっていってもこういうおかしみってつけようと思ってつくものじゃないからすごい武器だと思うなぁ。
しかも切り終わった「カストロ議長」が見事な出来栄えで「うぉぉおおお」というどよめきが!素晴らしい。


扇辰師匠「徂徠豆腐」
前座さんが座布団をひっくり返してめくりをめくろうとすると舞台に私服の男性がだだっとやってきて座布団の隅を触ってめくりを「門朗」に替えた。そして客席を見てまためくりを「扇辰」に戻し、引っ込んでいった。
文蔵師匠…。もうほんとにこういう時の文蔵師匠って楽しそう…。
出てきた扇辰師匠はめくりを確認してから座布団に座って頭を下げて「ほんとにもう…あの人しかも今日は出番ないからね。なのに楽屋にいて差し入れの羊羹食ってるんだから。何をするかわからない。あ、今日は写メタイムはないからね!」。

「この芝居、いろんなことがありました。最初は雨、それから地震、極めつけは雪、そして文蔵。ほんとにいろんなものにたたられながら…それでもこうしてお客様が来てくださって…ありがとうございます。おかげさまでほんとに充実した9日間でした。」そう言って頭を下げる師匠にじーん…。
こうやって同じ芝居に通うとなんか見ている側にも達成感っていうのが生まれてくるんだよなぁ。最初は苦手だと思っていた師匠だったけど千秋楽を迎えて好きになってるんだからいい気なもんだ。

寒い中荷を担いで売っている豆腐屋を呼び止める侍。冷ややっこを1丁買うとなけなしの醤油をかけて貪り食う。この貪り方がすごい…。こういうところが少し苦手なんだけど、でもこの侍は毎日この冷ややっこ1個だけが一日唯一の食事だからこれぐらいの必死さで食べるのは道理なのかも。
そして代金を言われると「豆腐屋…。あいにく今細かい銭がないのだ。まとめて払う。」と言う。それを聞いて「承知いたしました」と豆腐屋。
何回かそのやりとりがあった後、豆腐屋が小銭を用意して「大きいのでも大丈夫です」と言うと、「小さい銭がないということは大きい銭もないのだ」。
この後のやりとりで豆腐屋が「えらいっ!!!」と叫ぶのも、私的にはちょっと大げさすぎるように感じたのだけれど、でもここの反応が大きいからこそ、後半になって侍と再会したときの豆腐屋の反応にじーんとくるわけで…なんでもかんでも引けばいいってもんでもないんだろうなぁ…

出世した侍が豆腐屋を訪ねてくるシーンは本当によくてぐっときた
特に豆腐屋が「見出されたのですね!そうでなくっちゃ」と言うところ…その気持ちがあったからこそ毎日ただでおからを届けたのだろうし尊大に思えた侍が本当に心から豆腐屋に感謝をしていたのも伝わってきた。
よかったー。ほんとに素敵だった。