りつこの読書と落語メモ

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山椒魚

 

山椒魚 (新潮文庫)

山椒魚 (新潮文庫)

 

 ★★★★

老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作『山椒魚』、大空への旅の誘いを抒情的に描いた『屋根の上のサワン』ほか、『朽助のいる谷間』など12編。  

 「山椒魚」は教科書に載っていてかなり丁寧に読んだから内容は覚えていたけど、そのときはもやもやとよくわかったようなわからないような不思議な気持ちになった。
今こうして読んであの頃よりはわかったような気がするのだけれどほんとのところはどうなんだろう。

いつかは外に出ようと思っているうちに成長しすぎて岩穴から出られなくなってしまった山椒魚。群れて泳ぐ小魚たちを見て「哀れな奴だ」と蔑むことで自分自身の不幸から目を逸らそうとはするものの、厭世観は果てしなく、迷い込んできた蛙を閉じ込めて自分と同じ不幸を味わわせることで溜飲を下げる。

狭い穴の中に閉じ込められた山椒魚と蛙は「敗者」ではあるのだが、結局のところ生きていくことは負けることなのかもしれない、しょうがない、と虚しいけれどちょっと笑いたくなるような後味。

他の作品を読むナイーブで少し斜に構えた文学青年の姿が浮かび上がってきてちょっと意外に感じた。というのは、教科書に載っていた=立派な人、というイメージが、そんなことは決してないとわかっている今になってもまだぬぐいきれないのだな。

また何年かして読んだら受ける印象がまた違っているかもしれない。