りつこの読書と落語メモ

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蜃気楼龍玉 霜月の独り看板

11/7(月)、東京芸術劇場シアターウエストで行われた「蜃気楼龍玉 霜月の独り看板」に行ってきた。

寄席で見る龍玉師匠って「強情灸」「親子酒」「一眼国」ばかりで正直言って物足りない。本気の龍玉師匠をどこで見られるのだろう?と思っていたところ、いがぐみさんからこの会の案内メールが届き、「これに行けば本気モードが見られるはず」と思い、行ってみた。
って失礼な言い草だな、おい。


・龍玉「緑林門松竹(上)」
~仲入り~
・龍玉「緑林門松竹(下)」

龍玉師匠「緑林門松竹(上)」
前座なしでいきなり龍玉師匠が登場。うひゃー、かっこいい。もういきなりかっこいいもんなぁ。

「私も結婚してかなりたちますが、結婚して何年もたつとどうしても夫婦喧嘩っていうのが絶えません。もっとも私がいつも飲んだくれてるからいけないんですが」と龍玉師匠。
「言い合いになってお互いかーっとなってくるとどうしてもいけないことだとわかっていても手が出ちゃう。あ、かみさんのほうの、ですよ。いつもやられっぱなしで悔しいので、”江戸時代だったらお前なんか離縁状叩きつけられるからな”と言ったら、かみさんも負けちゃいなかったですね。”それを言うならお前なんか”斬り捨てごめんって斬られてるよ”」。

「でも実はかみさんが言ってることは間違っていて、あの時代の武士でも誰でも彼でも斬り捨てごめんって斬れたわけじゃないんです。そこにはそれちゃんとルールっていうものもありまして。」

そんな暗めの(!)まくらから「緑林門松竹(上)」。
医者の山本秀永は代々伝わる毒薬「譽石」を持っていた。いくら内緒にしていてもそういう噂は必ずどこからか漏れるもので新助市という悪党がその噂を聞きつけ毒薬を奪おうと秀永の家に奉公人として入り込む。
ある時、秀永が妾のおすわの家に行って留守の間をねらって、新助市は秀永の妻に「秀永が妾のおすわと二人であなたのことを毒薬で殺そうとしている。裏をかくために毒薬は私が預かりましょう」と偽り、妻から毒薬を奪う。そしてその妻をなぐり殺し、台所の揚げ板の下に死体を隠す。

その後、おすわの家に秀永を訪ねた新助市は「奥さんが間男している」と秀永をだまし家に連れ出すと、奪ったばかりの毒薬を使って秀永を毒殺する。
目といい鼻といい、体中の穴という穴から血がふきだす様子を満足げに眺める新助市。

殺した秀永の羽織を着ておすわの家を再び訪れた新助市は、秀永のふりをしておすわを抱き、次の朝気が付いたおすわが逆上すると、秀永から奪った五十両をちらつかせて、おすわを言いくるめてしまう。
おすわには秀永との間にできた新太郎という2歳の息子がいたのだが、息子も連れて逐電する。

3年の月日が過ぎて、新助市は気鬱の病にとらわれていた。何をしても楽しくない。気持ちが沈む。あれこれ考えていると、秀永を毒殺した時、血沸き肉躍るような興奮を覚えたことを思い出し、誰かを毒殺しようと考える。

たまたま再会した手習いの師匠である周伯堂を言葉巧みに自分の家に連れ込み、毒殺。その娘常盤木は吉原に売ってしまう。
そのことに気づいたおすわは、息子新太郎とともに新助市を殺そうとするのだが、逆に新助市に惨殺されてしまう。
二人を殺した新助市のところに、今までの悪事が露見し手入れが入るのだが…。

と、前半はここまで。
とにかく新助市がひたすらに「悪」で人を殺しまくるのだが、なんかもうここまで「悪」だとむしろ爽快というか、うひょー殺した、また殺したーみたいな感じで、ちょっと引いたところから見られる。
いやしかしなんだろな、こういう世界。この時代の人たちはいったいどういう気持ちでこういう物語を聞いていたんだろう、とそっちのほうがなんか気になる。


龍玉師匠「緑林門松竹(下)」
女占い者のもとに一人の男が占ってくれとやってくる。これが平吉。占ってもらっているうちに酒が出てきて占いの女が色仕掛けをしてきてその相手をしていると、二階から用心棒のような男が降りてくる。
この女がお関で美人局なのだが、自分がカモにしようとした男が平吉だと知ると態度を一変し、二人はいい仲になる。
そこへあんまと偽ってやってきたのが新助市。おともとお関と新助市はいい仲だったのだが、毒薬を奪いに行った新助市がおすわに惚れて所帯を持ったりして行方知らずになっていたのだ。
新助市が毒薬を持っていることを知ったお関はその毒を指につけて新助市にそれをなめさせて殺してしまう。

平吉は世話になってる阿波屋の若旦那惚次郎といい仲になっている花魁常盤木の間を取り持ってやろうとしているのだが、常盤木は剣術遣いの天城豪右衛門に身請けされてしまっている。
どうにかまとまった金がほしいと言っていた。
お関は新助市が金を持っていることに気づいて金を奪うために新助市に色仕掛けをして殺したのだが、目的は金だけではなく毒薬を手に入れることでもあった。

邪魔者の豪右衛門を毒で殺してやろうと平吉にもちかけたお関。
二人で豪右衛門の屋敷に乗り込みまんまと豪右衛門と家来を殺すのだが、手入れが入り、どうにも逃げられないと思った二人は毒を飲んで心中する。

後半も出てくるのは悪いやつらばかり。
だます、殺す、の繰り返しなのだが、お関が新助市を毒で殺すシーンは、まぁなんともいえずエロティックで、うひょー。でもすごくきれいなんだなぁ。これを気持ち悪くなくできる噺家さんはそうはいないだろうなぁ…。

結局この噺は「毒」に魅入られた人たちが人間性を失ってしまう、という噺なのかもしれない。
救いはないけれどとても面白かった。
しかしなんだな。さん助師匠がやってる「西海屋騒動」にしてもそうだけど、陰惨な噺の一つの「型」というのがあるんだな。あの時代の人たちもきっとアンチヒーローにワクワクしながら聞いていたんだろうな。そんな気がする。