りつこの読書と落語メモ

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さん喬一門師弟七人会・昼の部

10/22(土)よみうり大手町ホールで行われた「さん喬一門師弟七人会・昼の部」に行ってきた。
歯医者の予約があって時間的にギリギリと思っていたんだけど、覚悟していたより時間がかかってしまいピーンチ!歯医者さんに向かって「落語があるからとっととやって」とも言えないし、パソコンの時間をじりじりしながら睨む。ううううーはやくー。
会計を済ませ駅まで走り「これに乗ればぎりぎりどうにか」と思っていた電車の一本後の電車に飛び乗る。救いは何回か行っているホールだから駅を降りてからは迷う可能性は低いということ。
電車の中でこのブログを検索し昨年は前座さんが出ていたことが確認できたので今年も前座さんがあがることを祈る。なーむー。
会場に着いたら朝太郎さんの高座の最中だった。よよよよかった。


・朝太郎「真田小僧
喬太郎まんじゅうこわい
・さん喬「棒鱈」
・喬之助「干物箱」
・さん助「三人旅」
~仲入り~
・左龍「たがや」
・さん喬「ちりとてちん
・喬志郎「三年目」


喬太郎師匠「まんじゅうこわい
おお、喬太郎師匠がトップバッター!と思ったら、この後横浜で白酒師匠との二人会があってそれを終わらせるとまた戻ってきて夜の部にも出るという…。売れっ子だなぁ…。
余裕綽々の高座で、喬太郎師匠の手の上でころころ転がされる楽しさを満喫。
くず饅頭のくずの部分を舌にかぶせてれろれろやって悶えるのが変態チックでおかしかった。


さん喬師匠「棒鱈」
今は前座も落語の中で自己主張をするようになった。自分の修業時代はそんなことは許されなかった。
また変化球を投げる噺家が増えて、古典をまっすぐやっている若手は「自分も何か変化球を覚えた方がいいんじゃないか」と不安を感じることも多いようだ。
でもこういう風に自己主張をしたり変化球を投げる噺家が増えるということはとてもいいこと。みんながみんな一つの方向を見ているようじゃつまらない。いろんな方向があってその中からお客様が自分が好きな噺家を選んでいく、というのがいいと思う。

でも自分の師匠である小さんは余計なものは何も入れずに本当にまっすぐ自分の落語をやる人だった。
先代の文蔵師匠が「不動坊」を小さんに稽古をつけてもらいに来たとき。文蔵師匠が前座のセリフで「49日も過ぎぬのに嫁入りするとはうらめしい」と言うところを「嫁入りするとはうらやましい」と言ってしまった。
それを聞いた小さんは大いに笑って「面白いよ。それでやんなよ」と言ったあとに「でも俺はできねぇなぁ」と言った。
やったらウケるとわかっていても自分はそれはできないと言った小さんを今もよく思い出す、というさん喬師匠。

そう言ったあとに「私なんか弟子の稽古をしていて面白いと思ったら、それやってもいい?なんて聞いちゃいますけどね。そうすると喬太郎なんかが”いいっすよー(やれるもんならやっても)”って言いやがる。」と笑わせる。

それから弟子の酒の飲み方の話。
左龍はここの酒はああだこうだと薀蓄がやかましい。
喬之助は一門の中で一番酒が強いんじゃないか。たくさん飲んでも乱れた姿を一度も見たことがない。
喬志郎は飲めないかわりにデザートばかり何品も頼む。
さん助はビールをコップに半分ぐらい飲んでにこにこ喋ってると思ったら次の瞬間にはぐーーーと寝てしまっている。一番安上がり。

なんかさん喬師匠からこういう話を聞けるの、嬉しいなぁ。一門会と言ってもただ一門が出てきてさっと落語をやって帰る会が多い中、この会は時間も長くてこってりだからか、みんなが楽屋の様子とか一門のことをしゃべってくれるのがうれしい。

そんなまくらから「棒鱈」。さん喬師匠の「棒鱈」は、田舎侍に威厳があるから好き。あまりにこれをみっともなく描くと下品になるし、意地悪くなる。
侍の歌を聴いて笑いをこらえる芸者のおねえさんが大好き。楽しかった。

喬之助師匠「干物箱」
いつ見ても明るくてほんとにいいな、この師匠。
前にあがった喬太郎師匠が「楽屋では喬之助だけ一人でキャーキャー言ってる」って言ってたけど、そうなんだろうなぁと思って笑ってしまう。

「この会、さん喬と喬太郎の親子会でいいんじゃないですか?それでお客さんも嬉しいし我々も嬉しいしwinwinじゃないですか」なんて言ってたけど、そんなことないですからー。昨年の喬之助師匠の「品川心中」すごくよかった。そんな寂しいこと言わないで毎年やってほしい。

「まだまだ長丁場ですから僕は軽くやって下がります」の言葉通り「干物箱」を明るく軽く。
身代わりなのにすぐに我を忘れてキャーキャーやっちゃう善さんが喬之助師匠と重なって楽しい。


さん助師匠「三人旅」
おおお。なんかドッポに行くようになって、あそこで試した噺を寄席やこういう会でかけてるのねっていうことがあって、なんかうれしいぞ。
わちゃわちゃした江戸っ子とのんびりしていて人を食ったような田舎の人との会話が楽しい。馬子さんが知り合いにあって大きな声で声をかけるところが大好き。
お金を出してるのに馬はびっこだし女はおばあちゃん押し付けられる文ちゃんが気の毒だけどおかしい。


左龍師匠「たがや」
とにかく耐久レースのようなこの会。「楽屋はすでにどんよりした空気です」と左龍師匠。
喬太郎師匠は高座を終えて横浜へ。さすがにちょっと目が怒ってました。長い付き合いだからわかります。
喬志郎はトリの重圧からでしょうか。「本当は古典の方が好きなんです」とぶつくさ言っている。
さん助は師匠から指導を受けてます。
私も…こんなことなら鈴本休まなきゃよかった。

そんなまくらから「たがや」。テンポが良くてとっても気持ちのいい「たがや」。楽しかった!


さん喬師匠「ちりとてちん
フランス料理、ワインのまくらから「ちりとてちん」。これがとっても楽しかった!
ご隠居に茶目っ気があって、やたらとお世辞のいい男が何度も同じセリフを言うのがおかしくて、文句ばかり言う男も「ああ、こういう人いるなぁ」という感じでおかしい。
ほんとにさん喬師匠の軽い噺は大好きだー。(重い噺はもにょもにょ…)


喬志郎師匠「三年目」
「さっきうちの師匠が噺家をピッチャーに例えてましたけど。変化球を投げるピッチャーもいれば直球勝負もいるって。そういう意味では私なんかは全力投球でワンバウンドですから」。これには大爆笑。
正直言って、トリが喬志郎師匠と聞いて、心配だった。
この大きな会場が微妙な空気にならないかと思って。
でも意外にも(失礼!)「三年目」、喬志郎師匠に合ってた。
好みの問題かもしれないけど喬志郎師匠の落語ってリズムが悪いので聞いていて気持ちが良くならないんだけど、この噺にはそのテンポの悪さっていうか沈黙が合ってる。だからなんかなんともいえない味わいが出ているように感じた。

なるほど。新作よりいいかも。


この会、前座さんもいれると落語が8席というものすごいボリュームでほんとに耐久レースのような会。でもさん喬一門ってほんとにバラエティ豊かだから飽きさせない。これってすごい。そして後からこの会の主催をされている石井さんの文章を読んでちょっとじーん…。
いいなぁ。こういう風に一門を見守って志を持って主催する会って。適当に人気のありそうな人を見繕って適当な名前つけてやる会とは全然違う。来年も楽しみだ。