りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

消滅世界

 

消滅世界

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 ★★★

「セックス」も「家族」も、世界から消える……
中村文則岸本佐知子氏驚愕! 朝日、読売、東京・中日、週刊読書人他各紙で話題。日本の未来を予言する圧倒的衝撃作。

世界大戦をきっかけに、人工授精が飛躍的に発達した、もう一つの日本(パラレルワールド)。人は皆、人工授精で子供を産むようになり、生殖と快楽が分離した世界では、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉とタブー視され、恋や快楽の対象は、恋人やキャラになる。
そんな世界で父と母の〈交尾〉で生まれた主人公・雨音。彼女は朔と結婚し、母親とは違う、セックスのない清潔で無菌な家族をつくったはずだった。だがあることをきっかけに、朔とともに、千葉にある実験都市・楽園(エデン)に移住する。そこでは男性も人工子宮によって妊娠ができる、〈家族〉によらない新たな繁殖システムが試みられていた……日本の未来を予言する衝撃の著者最高傑作。 

 

この間読んだ「アカガミ」のいい、こういう話が流行ってるのかね、なんて思いながら読んでいたんだけど、いやいや案外ない話じゃないかも…と思えるところもあって、ぞぞぞ…。

それにしてもきもちわるい。
人工受精で生まれた子どもたちを「子供ちゃん」と呼び、その町に住んでる住民が全員「お母さん」。
子どもはみな同じ表情で、その子どもたちをふれあい動物園に行った時のようにみなで可愛がりエサをやる。

愛し合ってセックスをして子どもが生まれて「家族」を作る。自分たちが当たり前と思っている価値観がひっくり返る。
夫婦間の性欲は「近親相姦」と呼ばれ、愛の対象は「人間」の恋人の場合もあるけれど同じように「キャラクター」に変わる。

こんな世の中は嫌だという気持ちと、でもそういう時代に生まれたらそれが当たり前に思えるのかもしれないという気持ち。
その時代の価値観や常識が本能を凌駕していく恐ろしさ。あーこわい。きもちわるい。