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りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

レモンケーキの独特なさびしさ

 

★★★★★

9歳の誕生日、母がはりきって作ってくれたレモンケーキをひと口食べた瞬間、ローズは説明のつかない奇妙な味を感じた。不在、飢え、渦、空しさ。それは認 めたくない母の感情、母の内側にあるもの。以来、食べるとそれを作った人の感情がたちまちわかる能力を得たローズ。魔法のような、けれど恐ろしくもあるそ の才能を誰にも言うことなく―中学生の兄ジョゼフとそのただ一人の友人、ジョージを除いて―ローズは成長してゆく。母の秘密に気づき、父の無関心さを知 り、兄が世界から遠ざかってゆくような危うさを感じながら。やがて兄の失踪をきっかけに、ローズは自分の忌々しい才能の秘密を知ることになる。家族を結び つける、予想外の、世界が揺らいでしまうような秘密を。生のひりつくような痛みと美しさを描く、愛と喪失と希望の物語。

 

どこからどこまでも好みだった。

食べたもので作ってる人の感情がわかってしまうローズ。
9歳の時に母の作ったレモンケーキを食べて母の心の中の空虚を知ってしまう。

誰に相談しても病院に行ってもどうにもならないということを身をもって知ったローズは、その能力とどうにか折り合いをつけて生きていく。
しかしこの能力ゆえに、母の不倫に気づいてしまったローズはその秘密を自分一人の胸に秘め、危うい家族の絆をどうにかして保とうとする。

一方母の愛を一心に受けて育った兄ジョセフは、神童と呼ばれるほど頭が良かったのだが、成長するほどに内にこもるようになり、一人暮らしを始めてからはさらにこもるようになっていく。
実は兄にも誰にも言えない能力があったのである…。

繊細でありすぎることは時に生きることを苦しみに変える。
人に言えないような能力を持ってしまったらなおさらのこと。
その能力とともにそれを生かして生きていこうとするローズ、消えることを選んだ、あるいは選ばざるを得なかったジョセフ、そして逃げることを選んだ父。
その差は大きいようにも思えるけれど、たいしたちがいはないと考えることもできる。

ローズがジョージと電話で話すシーン、兄とのシーンには涙が溢れた。
寂しいけれど優しい物語。いままで読んだエイミーベンダー作品のなかで一番好き。