りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

珍品変品の会

8/5(金)、上野広小路亭で行われた「珍品変品の会」に行ってきた。
好きな師匠が3人出て、演じ手の少ない珍品落語をやるという夢のような企画。

・伸力「道灌」
・小助六薙刀
・蝠丸「忍びの医者」
~仲入り~
・夢丸「三くだり半」
・座談会 蝠丸、小助六、夢丸

助六師匠「薙刀傷」

地元でカルチャースクールの落語講座の講師をしているという小助六師匠。一番の古株は子どものころから来ていてかなりの落語通。
この間も生徒たちがそれぞれ1席ずつ落語をやってその後小助六師匠が講評をし、生徒にも意見を聞いたのだが、必ず手を挙げるのがこの子ども。

「語尾に”ね”が多いのが気になります」
「着物の着方がよくないと思います」
いちいち的確なのだが「もう少し古典らしい言葉を使った方がいいです」と言ったときにはさすがに後ろに控えていたお父さんがその子の頭をぽかんと叩いた。
中に最近まだ入ったばかりの中年の女性がいて小噺を披露したのだが「今の時点ではこれぐらいでいいと思います」って思い切り上から目線…。

そんなまくらから「薙刀傷」。
若旦那が具合が悪いと聞いて呼び出された番頭の久蔵。番頭になら話をすると言っていると聞いて若旦那の部屋へ。
ここまでは聞いたことがあるような展開…と思っていると、「わかりました。ってことはあれですね。歌が必要ですね。ワタクシ用意してまいりました」と崇徳院の歌を出したり「え?ちがう?ということはこっちですね。ええ、ええ。ちょっと値は張りましたけどご用意しております」とみかんを出したり、それも違うと言われると「わかりました。でしたらこれですね。これは重かったです。」と橋の欄干を出してきたり。
おそらく小助六師匠が入れたんだと思うけど、落語好きの心をくすぐるなぁ!

浪人の娘を好きになったと聞いて「私に心得がありますのでお任せください」と言って10両をつかんで浪人の家を訪ね、身もふたもない言いようをする番頭がおかしい。
旦那に責められて破れかぶれでもう一度浪人の家に行くと、その破れかぶれが功を奏しめでたく婚礼にこぎつける。店も繁盛して万事順調だったのだがそこにある日泥棒が押し入ってきて…。
サゲは思い切りダジャレでバカバカしくて最高~。
なんかすごくこなれている感があると思ったら、もう5回ぐらい高座にかけているとか。

蝠丸師匠「忍びの医者」

今日やるお噺はまずやってるのを見たことがない。30年前にとある師匠からちゃんと教わった噺なんですが、それから一度もやってなかった。ほったらかしにしてた。
今回「珍品」といったらこれかなとネタ出ししたものの、後からこれはやめておけばよかったと後悔した。
でもそろそろ稽古しないといけないと思いまして。私たいてい夜に石神井公園の川の周りを歩きながら稽古してるんですね。人もいないのでわりと大きな声を出したりして。
そうしたらこの日は後ろからついてくる足音がするんですね。それが私が止まると止まる。ちょっと怖いなと思ってまた稽古しながら歩き出してちょうど噺の切れ目だったので止まって後ろを振り返ってみたんです。そうしたらそこにいたのは60代ぐらいの女性で。「今やってたのは落語ですね?」と話しかけてきた。

いろいろ話してみたらその人は地元で素人を集めて「落語研究会」というのをやっていて老人ホームに慰問に行ったりしてるらしい。「あなた筋がいいからお入りなさい」と言われて、私気が弱いもんですから断れなくて「ええ、はい」。
すると「今度集まりがあるからその時に来て。メンバーに紹介するから」
「えええ?」と思ったんですが私気が弱いもんですからそれにも「はい」。
それで出かけて行ったら、やはり60代ぐらいの男女が集まってまして。その中にいた一人が寄席によく行くひとらしく「蝠丸師匠!なんでここに?!」。
その女性は「なんて失礼なことをするんだ」と怒られてましたが、私反省いたしました。やはりもっとメディアに出ないとだめだな、と。

淡々と話すのがもうおかしくておかしくて大笑い。
そんなまくらから「忍びの医者」。
どうも体の調子が悪いと言う八つぁん。見てもらったのが名代の藪医者でそんなんじゃだめだ、私の知ってる「忍びの医者」がいるから紹介すると言われて訪ねていく。
この医者は忍法を使って体の中にいろんな動物を小さくして入れて治療をするんだけど、病気を治すかわりに必ず何か別の弊害がおきる。最初具合が悪かったのは体の中に虫がわいていたからだと言って蛙を送り込むのだが、虫は食べてくれたものの体に蛙が残ってて頭をぴょこぴょこするのを止められない。
間に師匠の好きな昔の映画の薀蓄が入ったりしてとにかくとっても楽しい。
「バカバカしいお噺を聞いていただきます」の言葉通りとってもバカバカしいんだけどすごく面白い。師匠は「だめだ、これ」と言ってたけどわかりやすく面白いからこれは絶対寄席でもかけたらいいなー。

夢丸師匠「三くだり半」
真打になって地元で落語の講師をやるという仕事が入った、という夢丸師匠。ありがたいなぁと思いながら地元の駅に降り立つとそこにはチラシが貼ってあった。
「三味線や琴なんかと違って落語は簡単にできる芸です!」とあり夢丸師匠の写真に吹き出しが書いてあり「君もすぐに真打だ!」。

…いや、真打になるのに15年かかったんですが。
というのがおかしい。

そんなまくらから「三くだり半」。
長屋に住んでいる浪人はプライドばかりが高くて仕事をせずにお呼びがかかるのを待っているだけ。かわりに妻が働いているのだが稼ぎが少ないため子どもにも満足に食べさせてやることができず井戸端で倒れてしまう。見かねた大家が握り飯を作ってあげて、浪人が字がうまいので手紙の代書をやればいいと話を持って行くのだが、最初に来た客が遊女にラブレターを書けと言うと「そんなものが書けるか!」と追い出してしまう。
次に来たのが女房に三くだり半を書いてほしいという男で最初は断るもののそれならいいかと書いてやると、次から次へと三くだり半を書いてくれという客が訪れて…という噺。
これも夢丸師匠の工夫がきいているのか、噺としても面白いし、全然「あり」な感じ。面白かった。

座談会 蝠丸師匠、小助六師匠、夢丸師匠
3人がそれぞれこの噺をどうやって見つけたかとか誰から教わったかなどを話して言い訳をするという趣旨だったんだけど、主には蝠丸師匠が言い訳をしてそれをあとの二人がなだめる、という図ですごく楽しかった。
蝠丸師匠ってほんとにあのままの人なんだなぁ…。客席に向かって素であれこれ聞いてくるのがほんとに知りたくて聞いていてそれがもうおかしくておかしくて。

この会は蝠丸師匠の気が向いたらやる会らしく、前回が6年前だったけど評判が良かったからまた次回はそんなに間をおかずにやりましょうと二人が言っても、もごもごと言って「そうしよう」とは言わない蝠丸師匠がまたおかしかった~。
すごく楽しい会だったので6年に一度と言わず、半年に一度ぐらいやってほしいなぁ。蝠丸師匠によればとにかくそういう噺を見つけないといけないのでそれがまず大変ということだったけど。