りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

夜の九時落語2

5/4(水)、UNA galleryで行われた「夜の九時落語2」に行ってきた。3回続いた最終回の最終日。寂しいなぁ。
寂しがるほど何度も行けていないんだけどそれでも寂しい。

・「おしゃべり往生」
・「子別れ」

「おしゃべり往生」
まわりの人を辟易させるほどおしゃべりだった男が鯛の骨が喉に刺さって亡くなってしまう。
嘆く奥さんを慰める大家さん。
一方三途の川まで来たこのおしゃべりな男はやたらと陽気でしゃべりまくっている。
船に乗り込んでからも、あそこにいる若いカップルは訳ありで心中したんだとまるで見てきたかのように芝居調子で語る。
同じ船に乗っていた悪党二人。兄貴分が男のおしゃべりにカリカリ来て川に落ちてしまう。
それを助けに入ったおしゃべり男、得意の泳ぎを披露して…。

もうとにかく楽しい楽しい。
うわーーなにこの噺、すごくさん助師匠に合ってるーー!
後でさん助師匠が解説。
なんでも作家さんがさん喬師匠のために書き下ろした噺で、それを師匠の許可を得てやっているんだとか。
すごく楽しかった!これ寄席でやったらいいのに!

「子別れ」
朝帰りのまくらからなんと「子別れ」。
さん助師匠の「子別れ」は鈴本のトリの初日に見て、それ以来また見たいと思い続けていた。
まさかこの会で、こんな近くで聴けるとは。感激。

通夜に行くと言って出て行ったきり5日帰ってこなかったくまさん。
奥さんが訳を問いただせば吉原に行って前に関係のあった女と偶然再会したと言う。
女がおれの胸に飛び込んで泣くんだ。胸で泣かれたらしょうがねぇじゃないか、とのろけるのがもうなんていうかこの男の弱さとかずるさとか優しさとかがにじみ出ていてすごく魅力がある。
怒った女房をなだめようと「こっちに来いよ」と言うのなんか、ちょっといけないものを見てしまったような…。
何度もなだめようとして失敗して女房にきつく言われて逆切れするところもすごくリアル。
これがあるからこの後の部分がただのいい話じゃなくなって深みが出てくる。

父子の再会のシーンも、金坊が「手短に頼むぜ」とちょっと斜に構えてたり、それを陰から覗いて解説するろくちゃん(このキャラクター最高!)がいたり、聞き耳立ててる八百屋がいたりして、全然湿っぽくない。
家に帰ってからのシーンもあっさりしてるんだけど、おかみさんが怒って「出てけ」って言うと「出てけは言わないって約束したじゃない」と金坊。
すごいドキッとするなぁ、こういうセリフ。

鰻屋で3人で会うところも、復縁を請われたおかみさんが「虫が良すぎるんじゃない」と言うのがすごくいいし、その後の「だったらあたしの分も鰻を頼んでよ」と言うのがもう…。
前に見た時は、でもこのくまさんってまた同じことやっちゃうかもしれないなというような危うさを感じたんだけど、今回はいやこの3人なら大丈夫だろうという感じがした。不思議。

誰の「子別れ」よりさん助師の「子別れ」が好き。
なんだろう、ほんとにこれは。びっくりするぐらいいいんだよなぁ。

大事な会の最後にこの噺を持ってくるなんて憎いなぁ。
最後はさん助師匠の味のある(ありすぎる)字を主催者の方が高座の後ろに貼ってお開き。

ああ…ほんとに良かった。すごくいい最終回だった。
ほんとはもっと前から来たかったなぁ。
夜九時落語2があるんだから夜九時落語3もあったらいいなぁ。
素敵なおみやげもいただいて感謝感謝。