りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助 燕弥 ふたり會

あおば「子ほめ」
さん助「近日息子」
燕弥「心眼」
〜仲入り〜
燕弥「紙入れ」
さん助「井戸の茶碗

さん助師匠「近日息子」
さん助師匠の「近日息子」は一度鈴本で見たことがあるんだけど、与太郎父親に言われて「先へ先へ!!」と奇声を発したり、父親与太郎にあきれて「いいよ。お前はもうそのまま行きなさい」と思わず言ってしまったり。
独自なところがたまらない。

医者が来たり棺桶が来たり忌中の札が出たりしたのを見た近所の人たちが、おやじさんじゃなくておやじさんの隠れ後妻が亡くなったのだろうと噂するのって、さん助師匠でしか聞いたことがないんだけど、なんかそれもまた面白い。
後から出てきた燕弥師匠が「なんですか、今の珍獣は。」と言ったのがなんともいえずおかしかった。

燕弥師匠「心眼」
「心眼」をネタ出ししていた燕弥師匠。
なんでもさん助師匠と次のネタどうする?とメールをしていた時にさん助師匠は「井戸の茶碗」と言ってきたので、おおっさすがさん喬一門!と思いつつ、「(自分は)何をやろうかなぁ」と返したところ、さん助師匠から「心眼は?」と言われたらしい。
自分は「景清」も持っているから「心眼」は別にやらなくても…と言うと、さん助師匠が「でも景清より心眼の方が燕弥くんに合ってると思うんだよね」と。
さすが長い付き合い。そう言われちゃうとなんかやりたくなっちゃう。
それでネタ出ししたんだけど、しなきゃよかった…と燕弥師匠。

確かに私も生では一度も聞いたことがないし、なかなか寄席でもかけづらいだろうし、難しい噺だよなぁ…。
で、その後も、自分が初めて生で見たのは扇橋師匠が浅草演芸ホールの代バネで出た時で、その時はすごい感動して印象に残ってる、なんていう話をして、ますますハードルを上げながら「心眼」。

これがもうめちゃくちゃ良かったのだ。
ほんとに燕弥師匠にとっても合ってる!
目が不自由な梅喜がその日なかなか客が来なくて儲からなかったことで、弟から「どめくら」と罵られ、とぼとぼ歩いて帰ってくる。
夫の様子がいつもと違うことに気付いた妻のお清が訳を聞くと、泣きながら理由を語り、目が不自由なばっかりにこんな目に遭うと嘆く。
二人で神様に本気で信心しようと誓い合い、ようやく床につく 。

二人で熱心に信心をしてちょうど満願の日。
いつものようにお参りに来た梅喜が「今日が満願の日ですよ。お分かりですよね」と神様を脅しながら目を開けようとするのだが目が開かず、それならいっそ殺してくれと毒づいているとかづさ屋の旦那が現れて声をかける。
声をかけられてはっとすると梅喜の目が開く。
はじめて目が見えるようになって見るもの見るもの珍しくて新鮮な梅喜。
そのうちかづさ屋の旦那から女房のお清が美人ではないこと、芸者の小春が自分に惚れていることを聞き、なんとなくもやもやした気持ちになる。たまたま通りかかった仲見世で自分で自分の姿を鏡で見ると確かにすごくいい男。
そこに現れたのが小春で「目が開いたと聞いて駆け付けた」と言う。
浮かれ気分の二人が連れ込みに入ってお清と別れてお前と一緒になろうか、なんて話をしているところへお清が現れて…。

目が見えない時は器量のことなんか思いもせず最高の女房だと思っていたのに、目が開いて自分の姿を見た途端、なんとなくそんな女房じゃ惜しいような気がしてしまう 。
なんて勝手なんだとも思うけれどその気持ちは分からないではない。
でもそれだったら自分の命を削ってでも亭主の目を見えるようにしてくださいと祈ったお清があまりにもかわいそう…。

燕弥師匠の梅喜は、程よく軽薄ででも憎めなくてそこらへんがなんともいえず魅力的。
確かにとっても燕弥師匠に合ってる!

人間の裏と表を見せられて、それでもあんまり嫌な気持ちにはならずに、サゲを聞いてストンと腑に落ちて…。
すごくよかった。
ご本人は「もうやらないかも」と言っていたけど、絶対もったいない!!これは燕弥師匠の代表作になるよ!きっと。素晴らしかった。

さん助師匠「井戸の茶碗
さん助師匠が「井戸の茶碗」って意外すぎる!(←失礼)
ところがこれがとっても良かったんだ。すごくちゃんとしてて。
ってあれ?これも失礼?わはは。

清兵衛さんが正直だけどおっちょこちょいで軽くて、千代田卜斎がとても威厳があって品があって、高木佐久左衛門が潔白だけどちょっとやんちゃなところもあって。
それぞれの人物が生き生きとしているので、聞いていてわくわくしてくる。
そしてところどころにさん助師匠らしい壊れたおかしさがあってバカバカしく笑えるので疲れない。

佐久左衛門が清兵衛を見つけようと通るクズ屋の顔を確かめるところで、「なんだお前はずいぶんおでこが広いなぁ!どこまでが顔でどこまでが頭か分からないじゃないか!」には大笑い。
人情に走りすぎず、でも噺の持ち味を壊さず、とっても楽しい井戸の茶碗だった。

最後は二人が出てきてちょこっとだけトーク。
今年最後だからと一年を締めくくる話があったのだが、さん助師匠が「来年こそはいい年に」と言うと燕弥師匠が「おいおい、まってくれよ。それじゃまるで今年が悪い年みたいだったみたいじゃない。真打ち昇進があったんだからそれは勘弁してよ」と突っ込み…。
なんかほんとに違うタイプの二人だけど気が合ってるのが伝わってきて見ていてとても楽しい。いいなぁ、この二人会。
次回は来年の2月とのこと。楽しみだ〜。

そして個人的にはもっとさん助師匠が二人会とか自分の会をやってくれたらうれしいんだけどなぁ…。 と、ここでひっそりつぶやいてみたり。