りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

だれかのことを強く思ってみたかった

だれかのことを強く思ってみたかった     集英社文庫

だれかのことを強く思ってみたかった 集英社文庫

★★★★

レインボー・ブリッジを背にした制服の男女。頼まれて、シャッターを押しながら、思う。「この世界はどのくらいの強度でなりたっているんだろう?私たちはどのくらいの強度でそこに立っているんだろう?」(『ファインダー』)。水族館、住宅街、東京タワー、駅のホーム…。一年間にわたり、角田光代と写真家・佐内正史がふたりで巡り、それぞれが切りとった、東京という街の「記憶」。

ヘヴィな本の後はこんな短編集で一休み。ほっ。
タイトルがいいなぁ。角田さんはほんとにグッとくるフレーズを使ってくるなぁ。

ここにあるのはどれも懐かしい東京。行ったことのない場所もあるはずなのに、覚えがあるように思えるのはなぜなんだろう。
中野サンプラザやライオン、松坂屋など、馴染みのある場所が写っているからなのか。

過剰で親の評判のよくないピアノ教師や行く当てがなくて通う公園で毎日見かける猫男や男と服の話ばかりする女友達。
物語もとてもリアルに近くて懐かしく、読みおわって思わずニヤリとしてしまう。
企画ものでもキチンと仕事をする角田さん、さすがだ。