りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

みなと毎月落語会 柳家小三治独演会

4/15(水)、赤坂区民センターホールで行われた「みなと毎月落語会 柳家小三治独演会」に行ってきた。

・一琴「転失気」
小三治時そば
〜仲入り〜
小三治粗忽長屋

小三治師匠「時そば
「風に立つライオン」という映画を今やってまして、マネージャーに教えてもらってこの間見てきました。
これはもともとさだまさしの歌がもとになっていて。
さだまさしはかなり昔からやってる人ですけど私が最初に知ったのは本人の歌じゃなくて、知り合い何人かでカラオケに行った時に、一人の女性が「無縁坂」を歌ってね。それがすごくいい歌だなぁと思って「これはなんていう歌?」って聞いたのが最初。
それからうちの次女がテープを持っていて貸してもらって、本人が歌っているのを聞いたんだけど、本人は結構崩して歌ってるけど、私が最初に聞いた女性の歌が合唱的な歌い方っていうのかな。全然崩さない歌い方でそれがすごく心にしみいったんですよ。

そう言って歌いだす小三治師匠。
いやぁ…いいなぁ、小三治師匠の歌。すごく好きだなぁ。
自分でこうやって歌っても結構崩しちゃうっていうかね、一つのテクニックとしてね、ついね…。
なんて言いながら、そのさだまさしの作った歌に「風に立つライオン」というのがあってそれがすごく気障な歌で…だいたいこの人の作る歌はみんな気障なんですけど、気障だなぁと思いながらもなんかよくてね。悔しいんですけど。
それで自分の歌の会でね…いやさすがに自分からやりましょうって言って開くわけじゃないんですけど、誘ってもらったり呼ばれたりして歌うことがあって、そういう時に何回か最後に歌ってるんです、この歌を。
そう言いながら歌いだすんだけど、歌詞が出てこなかったり、また出てきたり…。

最近ね、落語も思い出せなくなることがあるくらいだから、歌なんかもっとそうでね。
最近の私の落語会にいらしてる方はご存じだと思いますが、最近の私の落語はね、なんかね、ちょっと躓くとね、先に進めなくなっちゃうんだよ。お客さんの方が、大丈夫かな大丈夫かなって心配な顔して見ていてね。

わははは。この間の千葉の「二人旅」のことかな。
確かにとっても冷や冷やした(笑)。
でもそれがまた楽しいんだよね。
間違えるのが楽しいわけじゃなくて、そういう中であっちへふらふらこっちへふらふらしながら思わぬセリフが飛び出したりするのがまた落語っぽくて楽しいのだ。
立て板に水みたいな完璧な落語もスバラシイけど、なんかこのふわっとした落語も楽しい。
それはファンだから何でもありがたがってるっているってわけじゃなくて、そこはかとなくこみあげてくるおかしみっていうのがあって、それこそが「味」ってやつじゃないかと思ったりするのである。
いやもちろん「衰えた」と言ってる人がいることも知ってるし、それはもちろんそうなんだとは思うし、ご本人もそうおっしゃってるけど、でもそれが今の小三治師匠の落語でそれがまた他の人の落語とはやっぱり違っていて、悪く言う人もいるけど私は大好きだから、もやっとしてもいいから長く続けてほしいなぁ、と思ってる。

で、話があっちこっちに行ったり歌詞を思い出して歌ったりしながら、そうだ、一番言いたかったのは映画のこと。
だいたいね、今まで原作がある映画を見に行って、映画の方がよかったって思ったことなんか一度もない。絶対そう。
今回もね。やっぱり歌とは別物でした。第一、風に立つライオンが出てこないんだから。冗談じゃないよ。
でもね。よかった。別物だけど映画も良かったんです。良くなかったらわざわざこんな話しないよ。
悔しいけどよかったです。

そんなながーいまくらから「時そば」。
まくらが長すぎた!と気づいたらしく、非常にスピーディ(笑)。それがとても江戸っ子らしくていいんだな。
「もうーやんなっちゃった」っていうのが妙におかしい。楽しかった!

粗忽長屋
また悪い癖が出ました、と小三治師匠。
まくらが長すぎた。ほんとに長くしゃべりすぎました。このホールはお上が絡んでるから大変時間に厳しい。延長料金を払って延長させてもらうこともできない。
分かっていてこういうことをやってしまう。それもそそっかしいっていうことなんでしょう。 そんな話から「粗忽長屋」。

これがもうとっても楽しかった。
最近の小三治師匠は、1席目のまくらが長くて、仲入り挟んで2席目がなんか神がかって面白いことが多い。あ、いけねぇ、時間がない!ってなるとエンジンがかかるのかな(笑)。
まめでそそっかしい男が、まったく会話が通じなくて、あくまでも死んでるのはくまだと信じ込んで遺体を誰か他の人にとられちゃいけねぇ!と慌ててるのもおかしいし、説得された「当人」が、「あーーこれはおれだー」と言うのもおかしい。
かみ合わない会話が実にシュールでこれぞ落語!って感じ。
しかも時間が押してたのにぴったりの時間に終わり、頭を下げながらホールの時計を指さしてしてやったり!な小三治師匠。
楽しいなぁ。これだから小三治師匠の追っかけはやめられない。