りつこの読書と落語メモ

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モンスターズ: 現代アメリカ傑作短編集

モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集

モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集

★★★★★

フランケンシュタイン映画が大好きな少年の爆笑の日々を描く「クリーチャー・フィーチャー」。几帳面な男の怪我した爪から生まれた無口な働き者「泥人間」。サマーキャンプでいじめられっ子が遭遇したもっとも危険な相手とは…「モンスター」。自分を吸血族と信じて疑わぬ少年の大切な“牙”が一家に招く事態を描く「ダニエル」など粒ぞろいの17篇。ケリー・リンクエイミー・ベンダー、ベンジャミン・パーシーら気鋭の作家が贈る、恐怖と笑い、遊び心に満ちた、ちょっぴり切ない傑作モンスター・アンソロジー。

▼収録作
序として/B・J・ホラーズ
クリーチャー・フィーチャー/ジョン・マクナリー
B・ホラー/ウェンデル・メイヨー
ゴリラ・ガール/ポニー・ジョー・キャンベル
いちばん大切な美徳/ケヴィン・ウィルソン
彼女が東京を救う/ブライアン・ボールディ
わたしたちのなかに/エイミー・ベンダー
受け継がれたもの/ジェディディア・ベリー
瓶詰め仔猫/オースティン・バン
モンスター/ケリー・リンク
泥人間(マッドマン)/ベンジャミン・パーシー
ダニエル/アリッサ・ナッティング
ゾンビ日記/ジェイク・スウェアリンジェン
フランケンシュタイン、ミイラに会う/マイク・シズニージュウスキー
森の中の女の子たち/ケイト・バーンハイマー
わたしたちがいるべき場所/ローラ・ヴァンデンバー
モスマン/ジェレミー・ティンダー

編者のB・J・ホラーズがモンスターの登場する雑誌やアンソロジーを呼んで面白いと思った短編を集めたのがこの作品。

自分のなかにある他の人たちとは異質であることへの恐怖心や孤独がモンスターと共鳴するのだろうか。訳のわからない恐ろしい存在としてではなく、ユーモラスだったり自分の領域を侵してきたり、より身近な存在として描かれた作品が印象に残った。

特に「受け継がれたもの」が一番印象に残った。
獣と心を通わせられたような気持ちになったり、やはり獣だから心を通わせられるはずがないと嫌悪したり、感情移入する妻に苛立ったり…。
わけのわからないものに魅了され恐怖を感じ殺してしまう。その身勝手さに身につまされる。

「ダニエル」「ゴリラ・ガール」「泥人間」も印象的。
そして最後におさめられた「わたしたちがいるべき場所」。この例えようもないさみしさはなんだろう。

自国でもマイナーな作品をこうして読める幸せを噛み締める。この本を見つけてだして翻訳してくださった訳者の方に感謝!