りつこの読書と落語メモ

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オウリィと呼ばれたころ―終戦をはさんだ自伝物語

★★★★★

戦争が終わり、「コロボックル物語」の作者が「ふくろう坊や(オウリィ)」と呼ばれていた時のお話。短編童話『クリクルの話』『大男と小人』所収。

私が子どもの頃に本を読んでこれはなんという人が書いたんだろうと初めて作者名を確かめた作家が佐藤さとる
コロボックルの物語には本当に衝撃を受けたし私もいつかこんな物語を書いてみたいと思った。
そんな佐藤さとるさんの自伝。

穏やかでユーモアのある人柄が滲み出ていてとても良かった。
戦争や終戦後のことも辛かったとか苦しかったとは書かずに、むしろ楽しみだったことやよくしてもらったことを淡々と書いている。
おとうさんが軍人で、子どもの頃から軍国少年となるような教育を受け、いつ死んでもおかしくないということを当たり前のように受け入れる。
価値観がひっくり返る世の中を目の当たりにしながらそれを淡々と受け止め、少しでも家計を助けようと学校に行きながらバイトに励む。
今の政治家が自分ではそういう体験をしたことがないのに、これこそが理想の日本人像と考えているのだったら本当に恐ろしいことだと思う。

戦争が終わってそれまで胸のなかに閉じ込めていた童話の種を取り出すところには涙が出た。
コロボックルの物語を生み出すところを読みたかったけれど、それは別のところに書かれているのだろうか。
読んでみたい。