りつこの読書と落語メモ

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氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)

氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)

氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)

★★★★

2000年代初頭のロシア―酒とドラッグに溺れるモスクワ大学の学生ラーピン、売春で日銭を稼ぐ愛くるしいブロンド娘ニコラーエワ、極上のスーツを身につけた知的な中年男ボレンボイム。金髪碧眼の一味に捕らわれた彼らの胸に青い氷のハンマーが振り下ろされる。そして彼らは不思議な「真の名」を語りはじめる。戦争と虐殺と謀略の20世紀を舞台に、「原初の光」の再生を目指すカルト集団の物語―。現代ロシアのモンスターによる“氷三部作”、エピソード2より刊行開始!!!!

拉致してきた男を男ふたりが縛り上げ、氷のハンマーで胸の真ん中を打つシーンから物語は始まる。
テープで口を覆っているのに男たちは叫ぶ「応えろ!」「応えろ!」。
キタキタキター、ソローキンキター!という出だしなのだが、物語は非常にシンプルでどちらかというと控えめな印象で、え?どうしたの、ソローキン?ソローキンらしくもない。
って私の考えるソローキンらしさって「こんなものをよく訳したなぁ」と驚くほどのエロ、グロ、スカトロ、悪ふざけ、暴力。
でもそれはあくまでも表現方法の一つであって決して主題ではないのだからしてそれを私のような者がソローキンらしくないなどと談じてはいけないのだがしかしそれにしてもソローキンらしからぬシンプルさに驚く。

物語は四部構成になっていて第一部はターゲットを次々拉致し氷のハンマーで心臓を叩いて「兄弟」を探す謎の集団・兄弟団が描かれる。彼らは何者なのか、何が目的なのか。
第二部では独ソ戦争が始まったころ自分の住む村にドイツ軍がやってきて彼らに連れ去られた子どもワルワーラの物語。
連れて行かれた収容所で氷のハンマーで心臓を打たれたワルワーラは「フラム」として覚醒する。彼女はやがて兄弟団の幹部となる。
第三部では兄弟団が新たに「兄弟」を探すために編み出したと思われる氷のハンマーと同じ効果を得られる「アイス」という健康増進器具を送りつけられた人々がこの器具を試していく様子が次々語られる。
第四部はエピローグのような内容で数多くの「兄弟」を見つけ出した兄弟団たちが次のステージに向かっていることを予感させる描写。

この一冊を読む限りは非常にSFっぽい展開なのだが、いったいこの物語がどこに向かっていくのか。
三部作の二作目ということなのだが、次に訳されるのは三作目?なんにしても楽しみだ。