りつこの読書と落語メモ

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海を照らす光

海を照らす光

海を照らす光

★★★★★

二十世紀初頭のオーストラリア。悲惨な戦争が終わり帰国したトム・シェアボーンは、灯台守となって孤島ヤヌス・ロックに赴任する。朗らかな妻イザベルを得た島での日々は平穏で幸せなものだった。 しかし数年後のある日、ふたりの人生は根底から変わった。島に漂着したボートに、生後間もない赤ん坊が乗っていたのだ。死産の直後で悲しみに沈んでいたイザベルは赤ん坊に魅了され、本土に報告しようとするトムを説得し、実子として育てはじめる。ルーシーと名付けられた赤ん坊は健やかに成長し、ふたりに喜びをもたらすが……。

物凄く良かった。最後はもう号泣だった。

トムは第一次世界大戦で大尉として戦い勲章までもらった英雄だが、自分が殺した敵や死んでいった仲間の兵士たちへの罪悪感から逃れられず、自らを罰するように灯台守となって孤島ヤヌス・ロックで暮らすことを選択する。
誰にも心を開かず死んだように生きるつもりでいたトムだが、朗らかで伸びやかなイザベルと出会い、彼女に惹かれていく。
二人の兄を戦争で亡くしているイザベルも心に傷を持っていたが、なかなかガードを解かないトムに体当たりして彼の心を掴み、やがてふたりは結婚する。
ヤヌスの灯台に移り住み、二人きりで暮らし始める。

何度目かの流産で朗らかさを失った夫婦の前に、あるとき漂泊したボートが流れ着く。中には死んだ男と生後まもない赤ん坊が乗っていた。
本土に報告しようとするトムに対して、二人で実子として育てようと必死で説得するイザベル。
赤ん坊はルーシーと名付けられ、夫婦だけでなく、イザベルの両親にも喜びをもたらすのだが…。

人生に正解などないけれど、二人は正しい選択をしたのだと思う。
トム、イザベル、ハナ、誰もが身を引き裂かれるような辛い想いをしたけれど、最後まで読んで、人間の善の部分を信じられるような気がした。

赦すことは難しい。
自分の人生を奪われたと思えばなおさらのこと…。
奪われたもの、返したもの、勝手にその選択をされてしまったもの。みんなどんなにか辛かっただろうと思うけれど、それでも思いとどまることができたのは、愛し合い信頼し合った日々があったからこそ。

真っ暗な海を照らす灯台のように、離れてしまってもお互いを思う気持ちと過去の幸せな時間が彼らの人生を照らしている。
すばらしい。