りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

たった、それだけ

たった、それだけ

たった、それだけ

たった、それだけ

★★★★

贈賄の罪が明るみに出る前に失踪した男と、その妻、姉、娘、浮気相手。考え抜いたそれぞれの胸の内からこぼれでた“たった、それだけ”のこと。本屋大賞ノミネート作『誰かが足りない』の感動ふたたび。人の弱さを見つめ、強さを信じる、著者の新たなる傑作!

不倫、贈賄、失踪と、あまりそそられない展開だなぁと思いながらも、一気に読んでしまった。
連作短編って読みやすいなぁ。

出口の見えない苦しい日々も、ほんのちょっとのことで光が見えたり前に進めたりする。
希望の見えない毎日も、たった一人のひとに出会えただけで、突破口が開ける。
子どもは親を選べないし、親のせいで出口を塞がれるように感じるときもあるけれど、子どもはいつか親を追い越していく。

大人たちの章が息苦しかったのと比べて、ルイ、トータの章は明るい未来を予感させる。
「そうはいかない」のが人生なのかもしれないが、それでも子どもにそう感じさせる何かを、与えてあげられる世の中であってほしい。
逃げただけの男が、老人たちを助けるように。若者を励ますように。