りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

北斎と応為

北斎と応為 上

北斎と応為 上

北斎と応為 下

北斎と応為 下

★★★★★

浮世絵師・北斎の娘、応為(おうい)こと葛飾お栄の謎に包まれた生涯を描き出す!

美人画では娘に敵わない」と北斎をして言わしめた実在の娘・お栄(画号は応為)。緻密な描写、すぐれた色彩と陰影表現を得意とし、父と共作するだけでなく、代作もしていた!
歴史の闇に消えていった「もうひとりの北斎」を、綿密な調査と豊かな想像力で描き出した歴史フィクション!

「日本翻訳大賞」の推薦文を読んで手にとった本。
落語を聴くようになってずいぶん払拭されたけどそれでも私の「和モノ苦手意識」はかなりのものなので、あの推薦文がなければ絶対に読むことはなかっただろう。感謝。

とても読みやすくとても面白かった。
真実に近づこうと様々な方面からアプローチし調べあげた作者の情熱に恐れ入るが、それよりもなによりも物語としてすこぶるおもしろく、登場人物がみな生き生きしていて跳ね回っていること、時代の空気を巧みに描き出していることに驚く。
これをカナダ人の作家が書いたなんて…!情熱は何にも勝る。

とても不自由な世界にいながら絵を描いているときは自由で、いろんなものに縛られ報いられないのに不幸ではなくて、蔑ろにされながらも誇りを失わない。
これを読んだら北斎のことも栄のことも好きにならないではいられない。
この時代にこんなふうに生きた女性がいたということがとても嬉しい。

今まで興味のなかった世界だけれど、北斎と応為のことをもっと知りたくなった。