りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

蘇える変態

蘇える変態

蘇える変態

★★★★★

“ものづくり地獄”の音楽制作、俳優業の舞台裏から、エロ妄想で乗り越えた闘病生活まで。突然の病に倒れ、死の淵から復活した著者の怒涛の3年間。

笑ったり共感したり泣いたりしながら読んだ。
この人は女にもてるだろうなぁ。だって母性本能がそれほどでもない私でもいい子いい子したくなるもの。
グッとくる言葉がたくさんあって詩人やなぁと思う。

現実の生活は、何も起こらないように見えて常に様々な要素が混在している。普通の人だって怒りながら涙が出て、そんなに自分にちょっと笑ってしまったり、いろいろと矛盾して混沌とした感情をいつも抱えながら真顔で過ごしている。
そこには余計なものがいっぱいだ。何も起こらないのがリアルではなく、一見だらだら続いているように見える裏側でめまぐるしく事件が起こっているのがリアルなのだと思う。

前からそうじゃないかとは思っていたが、やっぱり当たっていた。死ぬことよりも、生きようとすることの方が圧倒的に苦しいんだ。生きるということ自体が、苦痛と苦悩にまみれたけもの道を、強制的に歩く行為なのだ。

くも膜下出血のこともありのまま書いてある。
どんなにか不安で辛くて痛かっただろう。
集中治療室で筆舌しがたいほどの痛みのなか脳内SMプレイでどうにかしようとするいじらしさとバカバカしさ。
ナイーブだけどそんな自分を笑い飛ばせるふてぶてしさも魅力だ。
帰ってきてくれてほんとによかった。