りつこの読書と落語メモ

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水声

水声

水声

★★★★

過去と現在の間に立ち現れる存在「都」と「陵」はきょうだいとして育った。だが、今のふたりの生活のこの甘美さ!
「ママ」は死に、人生の時間は過ぎるのであった。

苦手なテーマだが不思議と嫌悪感を感じなかったのは美しい文章のせいか、それともそこに主軸が置かれていないせいなのか。
全くドロドロしていなくてむしろカラリと淡白なのが妙。

血縁というのはとかくドロドロしたものだが、この家族に限ってはそれぞれが内省的だったからこうならざるを得なかった、というような印象を受ける。
この物語の中で母は台風の目のような存在だが、つかみどころはなくてとりたてて悪意や熱意がないところが良い。

結局この物語でなにを伝えたかったのか、私にはよくわからなかったけれど、死に際のママの言葉が胸に響く。
私もこんなふうな心持ちで死んでいきたいな。

死んだら、おしまい。でも、たましいなんかなくても、あたしはあなたたちのことをずっと思っているからね。
(中略)
あたしが死んだら、盛大に悲しんでちょうだいよ。あんな素敵な人を亡くして、人類の損失ですって、そりゃあもう、盛大にね。