りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

殺人出産

殺人出産

殺人出産

★★★

「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい―。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない…。三人での交際が流行する、奇妙な世界を描いた「トリプル」など、短篇3作も併録。普遍の価値観を揺さぶる挑戦的作品集。

生と性が切り離され、産むことと殺すことが結びつけられた世界。
常識や善悪など時代とともに移ろっていくのだから、いまこのときにこの場所で自分が正しくあればいいのだというのは、シンプルだけれど恐ろしいことだ。
自分のなかにある正義や常識は絶対的なものではなく、自分が受けてきた教育や社会から与えられたものでしかないのだろうか。

考えさせられる作品なのだが、せっかく我々からすれば「普通の感覚」をもった登場人物がいるのに、まるで太刀打ちできなかったのがなんとも…。
もう少し主人公に逡巡してほしかった。

表題作が最も強烈だったが、「清潔な結婚」もなかなか…。 ユーモアのベールで包んでいるけれどやはりかなりグロテスクだ。 面白かったが、四作品全てこのテイストでちょっとお腹いっぱい。