りつこの読書と落語メモ

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献灯使

献灯使

献灯使

★★★★

鎖国を続ける「日本」では老人は百歳を過ぎても健康で、子供たちは学校まで歩く体力もない―子供たちに託された“希望の灯”とは?未曾有の“超現実”近未来小説集。

汚染され世界から隔離された日本。民営化された政府は気の向くままに法律をいじり、価値観は移ろいやすく、そこに住む日本人たちは何を信じて生きていけばいいのか分からない。
わからない中でも危なそうなもの(外来語、鎖国を否定するような言動)は避け、少しでも汚染されていない場所に住まい、生きている。
死ぬ能力を奪われた老人は昔の日本を懐かしんだり恨んだりしながら、汚染された世界に生まれて咀嚼する力もないようなひ孫の世話をする。

これは東日本大震災原発事故以後の日本を描いたディストピア小説なのだろう。
多和田さんらしく、思わずゲラゲラ笑ってしまうような言葉遊びやユーモアを効かせながらも、汚染水を垂れ流しながら原発を再稼働して国民の口を封じどんどん右傾化していく今の日本を辛辣に描いている。

希望など持てようもないような世界だけど、子どもには希望を感じさせるなにかがあるのが唯一の救い。
終わりかたが唐突に思えたのだが、この先は知りたいような知りたくないような…。
現実があっという間にフィクションに追いついて、この本が禁書になりませんように…。