りつこの読書と落語メモ

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春の庭

春の庭

春の庭

★★★★

第151回芥川賞受賞作。
行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』をはじめ、なにげない日常生活の中に、同時代の気分をあざやかに切り取ってきた、実力派・柴崎友香がさらにその手法を深化させた最新作。
離婚したばかりの元美容師・太郎は、世田谷にある取り壊し寸前の古いアパートに引っ越してきた。あるとき、同じアパートに住む女が、塀を乗り越え、隣の家の敷地に侵入しようとしているのを目撃する。注意しようと呼び止めたところ、太郎は女から意外な動機を聞かされる……
「街、路地、そして人々の暮らしが匂いをもって立体的に浮かび上がってくる」(宮本輝氏)など、選考委員の絶賛を浴びたみずみずしい感覚をお楽しみください

人間そのものではなく家と街と暮らしを描くことで、そこに今暮らしている人だけではなく過去に暮らした人や暮らしを浮かび上がらせる。
漂う不穏な空気に途中までどうなるどうなる?とドキドキしながら読んでいたのだが、いやこれはもしかするともしかしてナニモオコラナイ?

空き地になると前に何が建っていたか分からなくなり、引越して行って初めてこの部屋に確かに人が住んでいたのだなと気づき、亡くなった父親が本当に亡くなったという実感が持てずふらっと帰ってきそうな気がする。
人間もまた流れていく風景の一部なのかもしれない、と思った。