りつこの読書と落語メモ

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2014年・年間ベスト

2014年に呼んだ本は166冊。2013年が188冊だったのでちょっと減ったなぁ。
そのかわり、行った落語が161回。ほぼ2日に1回行ってる計算。あ、あほや…。そりゃ本を読む暇もなくなるわ…。今年はもう少し落語を控えめに…で、できるかな…。

不穏な物語を好んで読んでいたときもあったのだが、最近ダークな物語を読むのが辛くなってきた。
年のせいなのか、あるいは日本が不穏な時代に入っていくのを感じるせいなのか。
後味の悪い物語を喜んで読んでいた自分こそ、平和ボケだったのかもしれない…。
とはいうものの、ハッピーな物語しか読みたくない!なんていう腑抜けた本読みにはなりたくないのだが。が。
などとぶつぶつ言いながら、まずは国内作品。今年は国内も15作品。

1位:「離陸」

離陸

離陸

この年間ベストはあくまでも私がその年に読んだ本の中からのベストなので2014年に出版されたものとは限らないのだが、できれば上位には2014年の本を選びたいという気持ちもあったり。そういう「おまけ」は抜きにしても、これは素晴らしかった。
震災のことも含めてこの時代を生きている私たちにしかわからない危うい空気も伝わってきて、読んでいてそれが苦しくもあったけれど、こうして真正面から描いてくれる作家がいるということに励まされもした。

喪失を繰り返しながらも生きていくことを真摯に描いている。
自分が死ぬことも怖いけれど、自分の愛する人を失うことはもっと怖い。死を「離陸」として捕らえることで、悲劇を受け入れることの意味を教えてくれている。傑作。

2位:「後宮小説

後宮小説 (新潮文庫)

後宮小説 (新潮文庫)

これは1989年の作品なのだが、紀伊国屋書店の本のまくらで見て「読もう!」と思っていた作品。
歴史モノ、特に和モノには苦手意識があるのだが、これは本当に楽しかった。
というか、史実に基づいて描いているように見せて、実は全部フィクションというのがまた凄いのだが。
この作家の作品、もっと読みたい。

3位:「金色機械」

金色機械

金色機械

これも時代設定は苦手分野なのだが面白くてページをめくる手が止まらなかった。
日本人の作品だから小粒、なんていうのはほんとに最近の日本人の小説を読んでいない人の偏見だ!と言える。
自分が生き延びるためには人を殺すことも厭わない登場人物たち。
過酷な物語なのだが、読んでいるとなんか元気になってくる。まずは生き延びろ!そんなメッセージが伝わってくる。
物語を読む楽しさがぎゅっと詰まっている作品。

4位:「私のなかの彼女」

私のなかの彼女

私のなかの彼女

角田光代さんは大好きなので、小説、エッセイとコツコツ読んでいるけれど、とにかく多作なのでなかなか追いつけない。
古いものも順々に読んでいきたいけど、今出たものは今読みたい。
私小説ではないということだけれど、作家が主人公ということでどうしても角田さんと重ねて読んでしまう。どれだけ身を削って書いたんだろうと思うと、作家としても角田さんの覚悟も感じる。
でも作家でない私も共感できるところがいっぱい。痛い物語だけど最後まで読むと前向きな気持ちになれる。すばらしい。

5位:「赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

昔だったら絶対に読もうと思わなかった作家と作品。
自分には縁のない世界、私とは違う人たちの話、とは思えない。
この世の底のような物語なのに読後感は不思議と清清しかった。

6位:「エヴリシング・フロウズ」

エヴリシング・フロウズ

エヴリシング・フロウズ

津村さんも大好きでずっと作品を追いかけ続けている作家さん。
「ウエストウイング」で塾に通っていた小学生だったヒロシが主人公。
中3男子が主人公なので、他の津村作品とは一味違った気楽さが流れていてそこがとてもいい。
いじめや虐待など胸が痛くなるような描写もあるのだが、男子ならではの距離感があってそこがとても良かった。

7位:「この本が、世界に存在することに」

本にまつわる物語を集めた短編集。本好きにはたまらないタイトルだが、集められた物語も本との関わりから登場人物が立ち上がってくるという作りになっている。
どれもじんわりと本を読むという行為を励ましてくれる作品でとても良かった。

8位:「犬身」

犬身

犬身

「犬になりたい」と夢想する女が怪しげなバーテンダーと魂の契約を行って本当に犬になり思いをよせる女性陶芸家の飼い犬になるという物語。
変態だなぁと笑いながら読んでいると、どんどん息苦しくなる展開に…。
結構えぐい世界だけど、乾いたユーモアがあってそこが好きだ。

9位:「東京日記4 不良になりました。」

東京日記4 不良になりました。

東京日記4 不良になりました。

大好きな川上弘美さんのエッセイ。なによりも文章が良くて毎日の暮らしを優しく肯定されている気がして元気が出てくる。
震災の話も出てきて直接的な言葉でつづっているわけではないのに、そのときの空気を伝えていて胸が苦しくなる。
辛いことが多い世界だけれど、こんな風に世界を面白がって見る視線を失わずにいたい。そんな気持ちになるエッセイだ。

10位:「なぎさ」

なぎさ (単行本)

なぎさ (単行本)

本当に久しぶりに読んだ山本文緒作品。
私も仕事でどんどん追い詰められて自分自身を見失っていた経験があるので、この物語は読んでいてとても痛かった。
フツウに会社員をしている夫も、フツウに専業主婦をしている妻も、お互いに見えない圧に押しつぶされそうになっていて、しかしお互いにそのことに気づかない。
苦しいときほど内にこもり助けを求めることができない。でもそれに風穴を開けてくれるのは自分以外の人間なのだ。
大切な何かを失ってもすべてを奪われるわけではない。そんなことを教えてくれる。

11位:「穴」

穴

なにも起こりそうにないつまらない日常のなかに紛れ込んでくる異常。
ふだん自分が当たり前だと思っていることが実は危うい信頼できないものの上に立っているということをじわりと知らせてくる物語たち。
「工場」に引き続き、稀有な才能を感じさせてくれる作品。

12位:「さして重要でない一日」

さして重要でない一日 (講談社文芸文庫)

さして重要でない一日 (講談社文芸文庫)

なんだかわからないけど妙にリアルででもちょっとSFチックなありそうでない世界を描いた会社員小説。
リアルだけど異常、異常だけど普通、なんだろ、これ。

13位:「妻が椎茸だったころ」

妻が椎茸だったころ

妻が椎茸だったころ

一時期よく読んでいたけど「もしかして苦手かも」と思いしばらく離れていた中島京子さん。久しぶりに読んだ短編集は静かで不気味でほんのり優しくて…とても好みだった。

14位:「爪と目」

爪と目

爪と目

ガラス越しに世界を見ているような、それでいて肉体的な接触(それも不快な)があるような、不思議な作風。
怖くて気持ち悪いけど気持ちいい気持ち悪さ。

15位:「バ・イ・ク」

バ・イ・ク (講談社文庫)

バ・イ・ク (講談社文庫)

小三治師匠がバイクに夢中だった頃の話をまくらでされることがあったので、大切に積んでいたこの本を。
ここに出てくる小三治師匠が若くて泣けてきちゃうんだけど、それでもこの小三治師匠が今の小三治師匠に積み重なっているんだなぁ、としみじみ。
落語をしながら北海道を駆け巡る若手落語家時代の小三治師匠がキラキラと眩しく、また仲間とのやりとりがバカバカしくも楽しい。

海外篇。こちらも全15作品。

1位:「甘美なる作戦」

甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)

甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)

「低地」も「守備の極意」も甲乙付けがたかったのだが、とにかく読んでいる時の高揚感、楽しさがハンパなかったので、こちら。
マキューアンがこんなスィートな小説を!という驚き。そしてスィートと見せてやっぱり意地悪というしてやられた感。
知っててやってるね?な楽しさ満載で小説を読む楽しさがぎゅっと詰まっている作品。

2位:「守備の極意」

守備の極意(上)

守備の極意(上)

守備の極意(下)

守備の極意(下)

野球、友情、青春、再生ときたらもう好きに決まってる!
その予想通り、いやその一歩も二歩も斜め上を行く小説で、これはもうたまらん。
思わず「んん?」と見直してしまう不思議な表紙同様、物語のほうも独特のテンションで独自に展開していくので、どういう結末になるか想像がつかないというわくわく感。
あまり話題にならなかったようだけど私の中ではイチオシ。

3位:「低地」

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

やっぱりラヒリはいいなぁ…。
私の中では「短編」のイメージが強いのだが、長編もいい。べらぼうにいい。
それぞれに理由があって想いがあるのに分かり合えない、すれ違う人々を描いているのに、どこか温かい。
素晴らしい作品。やはりラヒリは間違いない。

4位:「秘密」

秘密 上

秘密 上

秘密 下

秘密 下

「このミス」でもいつも上位に入るケイト・モートン作品。
これってミステリー?となんとなく解せない気持ちになるのだが、確かにこの物語もなぞに満ちた母の人生を探り出すという、ミステリー仕立ての物語。
本軸のミステリーでぐいぐい引っ張りながら、細部の描写で後からじわじわ来るシーンやエピソードを散りばめているのがこの人のうまいところ。

5位:「図書室の魔法

図書室の魔法 上 (創元SF文庫)

図書室の魔法 上 (創元SF文庫)

図書室の魔法 下 (創元SF文庫)

図書室の魔法 下 (創元SF文庫)

ファンタジーでもありSFのガイドでもあり一人の少女の成長の物語でもあるこの作品。
一人ぼっちで全身をガチガチの鎧で覆っていた少女が本に喜びを見出し、本を読むことで閉じていた目、心が開かれいてく。
主人公モリによるブックガイドとしても楽しめる作品で、巻末に紹介された作品の一覧があるのも嬉しい。

6位:「バージェス家の出来事」

バージェス家の出来事

バージェス家の出来事

「オリーヴ・キタリッジの生活」でハートを鷲掴みにされたエリザベスストラウトの新作。
オリーヴキタリッジ以上に陰鬱で明るい要素はほとんどないのに読んでいて楽しいという不思議。
過ちを繰り返してしまう弱い私たちでも救いはあるし成長できる、そう思わせてくれる。

7位:「サルなりに思い出す事など ―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々」

サルなりに思い出す事など ―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々

サルなりに思い出す事など ―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々

このタイトルとこの表紙でなければ絶対に手に取ることはなかったであろう作品。
アメリカの生物学者でストレスと神経変性の関連を研究した著者が、ヒヒの集団の長期にわたる観察を行った日々を綴ったノンフィクションだ。
ヒヒたちの生態やそれぞれの性格やボス争いなど詳しくユーモラスに描かれていてそれだけでも面白いのだが、著者がアフリカの様々な地方を訪れたときの冒険談は高野秀行のエッセイ並みにバカバカしくも楽しい。
しかし面白いだけでは済まされない苦い現実もあって、げらげら笑いながら気楽に読んでいると最後にガツンとやられる…。
もやもや脳の私でも何年もたっても忘れられない作品になった。

8位:「お菓子とビール」

お菓子とビール (岩波文庫)

お菓子とビール (岩波文庫)

作家として生きることの困難や職業作家の薄っぺらさ、そしてそれを取り巻く人たちへの批判をかなり辛辣に書いているのだが、ユーモアに満ちた視線が温かく、薄っぺらな作家さえも愛おしく思えてくる。
久しぶりに読んだけど、やっぱりモームはいいなぁ!もっとモームを読まなくちゃ!

9位:「あるときの物語」

あるときの物語(上)

あるときの物語(上)

あるときの物語(下)

あるときの物語(下)

あれもこれもとかなり大風呂敷を広げた作品で、ちょっと稚拙?と思うところも正直あったけれど、とにかく熱意に溢れる物語で、作者の想いは間違いなく受けとった!

10位:「マンゾーニ家の人々」

マンゾーニ家の人々(上) (白水Uブックス177)

マンゾーニ家の人々(上) (白水Uブックス177)

マンゾーニ家の人々(下) (白水Uブックス178)

マンゾーニ家の人々(下) (白水Uブックス178)

これって面白いの?私にわかるんだろうか?と思いながら読み始めたのに、読み終わった時には「読んでよかった…面白かった」と満足感でいっぱいになった作品。
今の私たちは物事を単純化しすぎているのではないか、とこれを読み終わったときにしみじみ思った。

11位:「愛はさだめ、さだめは死」

図書室の魔法」のモリに勧められて読んだ作品。 SF好きじゃなくても題名だけは知っている名作だが、ものすごくバラエティに富んだ短編集でとても良かった。
特に表題作はタイトルから想像していたような物語では全くなかったのだが、読み終えて時間がたつほどに印象が強烈になっていくという不思議な物語。何年かしたらまた読み返したい。

12位:「ツヴァイク短篇小説集」

ツヴァイク短篇小説集

ツヴァイク短篇小説集

時代も国も宗教感も違うのにいま読んでもまるで古びていない。
ツヴァイクもこれからじっくり読んでいこうと思っている作家。

13位:「いにしえの光」

いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)

いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)

なんとなく苦手意識を持ちつつも、新刊が出ると気になって読まずにいられないジョンバンヴィル。
老齢になった舞台俳優が苦い初恋を思い出すというわたし的にはまるでそそれらないストーリーなのだが、読み終わってなんともいえない感動が残った作品だった。

14位:「魔法の樽」

魔法の樽 他十二篇 (岩波文庫)

魔法の樽 他十二篇 (岩波文庫)

読んでいると脂が抜けてカサカサになっていくような、逃れられない誰かに執拗に追いかけられるような、そんな気分になる作品が集められた短編集。
奇抜ではないのだがなんか変で「え?なに?」ともう一度読み返したくなる。

15位:「愛と障害」

愛と障害 (エクス・リブリス)

愛と障害 (エクス・リブリス)

反自伝的短編集ということだが、ボスニア出身でアメリカに渡っていたことでユーゴ紛争を逃れた男というのは作者自身と重なる。
アメリカ人にもなれず、戻る故郷もなく、アイデンティティーを失いかけている男を描いているが、トーンは暗くない。
作家の自意識と苛立ちがリアルで痛面白い作品だった。

こうして振り返ってみると、2014年も面白い本にたくさん出会えていたんだなぁ。
読みたい本が増える一方で読むほうが全然追いつかないんだけど、国内海外問わず、新しい作品古い作品こだわらず、今年もたくさん本を読んでいきたい。