りつこの読書と落語メモ

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甘美なる作戦

甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)

甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

MI5の女性スパイと、若き小説家。二人の間に生まれた愛は、幻だったのか? 任務を帯びて小説家に接近した工作員は、いつしか彼と愛し合うようになっていた。だが、ついに彼女の素性が露見する日が訪れる——。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら、70年代の英国の空気を見事に描き出す、ユニークで野心的な恋愛小説。ブッカー賞エルサレム賞作家の最新長篇。

楽しい!好き好き!
美人の女スパイ・セリーナと売れない作家・トム。
女は「Sweet Tooth」という作戦の任務で作家に近づくが、彼の小説を読んでいるうちに彼に惹かれるようになり、二人は愛し合うようになる。
自分の正体を明かさなければいけないと思いながらも、打ち明けたら彼を失うことになるのではないかと思うと、言い出すことができない。
そうしているうちに彼の作品がようやく日の目を見ることになり、彼女の正体が明るみになる日が…。

シチュエーションだけでも魅力的なのだが、細部にまで神経が行き渡っているのでどこからどこまでも楽しい。
物語の中で語られる物語って大好きなんだけど、トムの書く小説がいかにもマキューアンの書く小説っぽくてそれがまた楽しい。
そして最後まで読んでこの物語の仕掛けに気づいて、ぞくぞくっ。

意地悪マキューアンが企みなしにこんなスイートな小説を書くはずがない…きっとこれはなにか裏があるに違いない、と無理して強面を作っていても、ついつい顔がにやけてしまう。それこそマキューアンの思うつぼだったとしてもいいのだ。喜んでマキューアンの手のひらの上でコロコロころがされ ようじゃないか。
小説を読む楽しみがぎゅっとつまった作品だった。