りつこの読書と落語メモ

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そこへ行くな

そこへ行くな

そこへ行くな

夫婦同然に暮らしてきた男の秘密を知らせる一本の電話(『遊園地』)。バスの事故で死んだ母はどこへ行こうとしていたのか(『ガラスの学校』)。中学の同窓生達が集まったあの部屋の、一夜(『ベルモンドハイツ401』)。「追っかけ」にあけくれた大学生活、彼女の就職は決まらない(『サークル』)。引っ越し先の古い団地には、老人ばかりが住んでいた(『団地』)。貸しグラウンドの女事務員が、なぜ俺の部屋を訪ねて来るのか(『野球場』)。母の入院先に、嫌われ者の同級生も入院してきた(『病院』)。行くつもりはなかった。行きたくもなかった「場所」へ―全七編収録。

ざわざわと嫌な感じにからめとられるような不穏な作品たち。
間違った方向に進んでいっていることがわかるのに止められない。見たくないものが待っている予感はあるのに見ずにはいられない。逃げなければと思っているのに足が動かない。自分に向けられる悪意を目の当たりにした時のへなへなと力の抜ける感じ。
ほんとにこの人は嫌な感じを描くのがうまいなぁ。

なのに不思議と読みたくなるのは潔さがあるせいなのか、どろどろしている中に何かこうキラッと光る美しさが感じられるからなのか。
不穏な物語が続く中、最終話の「病院」にだけ希望が見えて良かった。これが最終話でよかった。