サルなりに思い出す事など —— 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々
サルなりに思い出す事など ―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々
- 作者: ロバート・M・サポルスキー,大沢章子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2014/05/23
- メディア: 単行本
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1970~90年代にかけてのケニアとその周辺の国々を舞台に、〈ヒヒの群れの23年間にわたる観察記〉〈アフリカ体験・見聞記〉〈生物学研究者の成長物語〉をより合わせながら、スラップスティックな諧謔味全開で綴った抱腹絶倒のノンフィクション。
タイトルと表紙に惹かれて読んだが、とんでもなく面白い。
アメリカの生物学者でストレスと神経変性の関連を研究した著者が、ヒヒの集団の長期にわたる観察を行った日々を綴ったノンフィクション。
ヒヒたちと一緒に暮らしながら、彼らに麻酔の吹き矢を放ち眠らせて血液を採取する。
ヒヒたちの生態やそれぞれの性格やボス争いなど詳しくユーモラスに描かれている。
また著者がアフリカの様々な地方を訪れたときの冒険談は高野秀行のエッセイ並みにバカバカしくも楽しい。
表情が読めないアフリカの人たちは、時に親切で優しく、時に平気で人を騙し盗みを働く。人の見極めや状況判断を間違えると命とりになる。
何度も騙されたり命の危険に晒されながらも、へこたれることなく果敢にチャレンジする姿勢が愉快だ。
ヒヒたちにはそれぞれに個性がありその様子を読んでいると「動物」とは思えなくなり、ついつい感情移入してし合うのだが、そうやって読んでいるとガツンとやられる…。
アフリカの政情にむねをえぐられ、そして著者がいた頃より更に酷い状態になっている現在に呆然とする。
タイトルにあるサルは、ヒヒたちだけではなく私たち人間のことなのではないかという気がした。