りつこの読書と落語メモ

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犬に堕ちても

犬に堕ちても (単行本)

犬に堕ちても (単行本)

★★★★★

42歳、女は日常から逃げ出すように旅に出た。スーツケースだけを持って。辿りついたのは海辺の田舎町。北欧デンマークの日常、屈託のない人々のやさしさの中で、孤独な女の心は次第に紐解かれていく。P.O.エンクウィスト賞、“黄金月桂冠文学賞を受賞したデンマーク女性作家、初の邦訳。

思っていたような小説ではなかったのだが、そして面白いか面白くないかと言えば決して面白くはないのだが、好きだった。
泣く場所を求めて家を出た42歳の女。たどり着いた海辺の田舎町で若夫婦に拾われる。
事情を聞くでもなく優しく接してくれる彼らとの日々。質素だけど手間をかけて作られた料理、叔父の家にいる犬の世話、近所に住むキンキン声のおばあさんとの付き合い、一緒にやるボードゲーム。淡々と綴られる彼らの暮らしに読んでるこちらの気持ちも柔らかくなる。
そんなある日夫の方が事故に遭い、妻も看病で病院で寝泊りし、彼らの家に一人取り残される女。彼らのかわりに犬の世話をしに行ったり、妻の職場に届け物をしたり…。
彼女の回想から彼女の過去に何があったのか徐々に明らかになるのだが、しかし全ては明らかにならない。しかしなにか悪いことが起こりそうという予感がしてくる…。

この主人公、ダメダメだなぁ。そんなにダメダメに描かれている訳じゃないけどダメダメなのが分かる。中途半端に優しかったり理解できたり共感しあえるのは、ある意味なにもないより悪い。そこらへんの中途半端さがとてもリアルだ。
犬の末路がこの主人公のとってきた行動の結果を暗示しているように思える。
とてつもなく寂しい小説。だけど嫌いじゃない。