りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

らくご街道 雲助五拾三次ー鰻ー

7/14(月)、日本橋公会堂で行われた「らくご街道 雲助五拾三次ー鰻ー」に行ってきた。
第一回から行っているこの会。皆勤賞ではないのだが、数えてみたら今回で11回目。私が行っている落語会の中でも間違いなく最多回数を誇る。会の雰囲気もいいし、雲助師匠をたっぷり楽しめて、毎回満足の会。

・雲助「後生鰻」
・雲助「鰻の幇間
〜仲入〜
・雲助「子別れ(通し)」

「後生鰻」
今回のテーマが「鰻」ということで、二つ目時代に仲間と鰻屋に行った思い出話。
注文を聞いてから裂くものだから出てくるまでに50分強かかる。その間酒を飲み続けていたものだから、出来上がったころにはべろんべろん。味も覚えていない。
自分たちしか客がいなくて、ガラス扉の向こうで料理しているところが見えるんだけど、そこにも人がいなくて、ほんとにちゃんと来るのかしら?というのが、なんか目に浮かぶようで楽しい。

「後生鰻」こういうシュールな噺、大好き。これこそ落語。こういう噺を不謹慎だとか言って禁止したりするのって本当にバカ。
またこういう噺がうまいんだ、雲助師匠。繰り返しの妙。毎回「ああ、いけませんいけません」と驚いて丁寧に諭すからおかしい。
話し終わったあとに「こういう噺はやりようがあって」と話し始めた雲助師匠。
「これを人情噺風にやるととたんに陰惨になる」と言って、赤ん坊のところからやり始めたのがめちゃくちゃそれらしくておかしかった。

「鰻の幇間
幇間が扇子をぱっと開くだけでリズムがあってお調子者感が出ていて楽しい。
自分でお金を払うと分かった途端に説教臭くなる幇間がおかしい。こうこがどす黒い、きゅうりが生だったよ、酒のお燗がぬるいよ日向に置いてる方が温かいくらいだ、あのお銚子の柄はなんだ、うなぎがもそもそしてる…。そう言いながら「払いますよ」と顔をしかめるのがおかしい。
かけてある絵が「天照大御神」っていうのもおかしかった。

「子別れ(通し)」
初めて通しで見た「子別れ」。これがもう素晴らしく良かった。
近所の葬式の後に吉原に向かう熊。酒を飲んでだらしなくて何をするかわからない不穏な感じ。
それでも屑屋の長さんを誘って吉原に向かう二人の会話は楽しくて、背中を叩かれて入れていた強飯の具がつぶれて汁がふんどしにしみてきたり、若い衆をからかったりするのは楽しい。
3日居続けて家に帰っておかみさんに向かって吉原のノロケを聞かせ、おかみさんが怒り出して亀を連れて家を出るんだけど、それを止めに入る近所の人たち。自分のかかあはあんな風に飲んで帰った自分を待っていてくれないと言って、自分がうけている仕打ちを語る男が面白い。
また夫婦喧嘩はこうやって止めるもんだと語る熊の身勝手な言い分よ…。
でもこの前半部分があるから、後半が単なるお涙ちょうだいじゃなくなるわけだなぁ。

後半、番頭さんに誘われて木場に向かう熊。番頭さんが「このあたりだけど…」とつぶやくので、親子を再会させようと番頭さんが仕組んだことがわかる。(じーん…)
亀と会った熊が心底うれしそうに呼び寄せるところ、亀が「一人じゃ寂しいだろ」と生意気に言うところ、傷のことを話しながら泣く亀にそれを聞いて後悔して泣く熊にもらい泣き…。
またおかみさんがカラっとしていてめんどくさくないのもいいし、再会したところを何度も繰り返し言う熊も微笑ましくて、いいわー。

後半は他の噺家さんでも何回も見ているし、雲助師匠でも2回ほど見ているんだけど、今回じっくり通しで見て本当になんともいえず良かったなぁ…。