りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

一之輔の無茶ぶられ その五

7/2(火)、座・高円寺2「で行われた「一之輔の無茶ぶられ その五」に行ってきた。

・一之輔 昇太 ビフォートーク
・一之輔「らくだの子ほめ」
・昇太「オヤジの王国」
・一之輔「らくだ?」
・一之輔 昇太 アフタートーク

今回がファイナルということで、ビフォートークでは今までの「無茶ぶられ」を振り返る。
どれも面白そうなのだが、その後使えている噺もあれば、それっきりになっている噺もある、というのが面白い。
特に見てみたいのが「不動坊バラ園」。これはぜひ見てみたいー。
これは結構やってます、と言う一之輔師匠。
「すごく落語がうまい人と二人会をやらせれることがあるんですよ。そういうときにやってやります。飛び道具として」に笑った。具体的には文菊師匠の二人会、というのにさらに笑った。

そして前回が一番きつかった、と喬太郎師匠の無茶ぶり。「鰻の幇間」をくすぐり抜きで。そうそうこの回は見に行ったんだった。
喬太郎らしいね」と昇太師匠。
「いやこれはもう賛否両論。ふざけんな、金返せって帰っていったお客さんも多数いました」と一之輔師匠。
喬太郎が言いそうだね、確かに。うん。病んでるね」と言う昇太師匠に「でも喬太郎師匠も自らくすぐり抜きでやったんですよ、竹の水仙を」と一之輔師匠が言うと「竹の水仙ならいいじゃん。くすぐり抜きでも。人情噺なんだから。鰻の幇間のくすぐり抜きはきついだろう。くすぐり抜いたら7分ぐらいで終わっちゃうんじゃない?」。

そんな昇太師匠からの今回の「らくだ」への無茶ぶりは。
・らくだが死んでない。
・最初から屑屋と半次が酔っ払ってる。
・(シークレットテーマ←終わってから発表された)ハッピーな噺

「それにしてもよくこんな企画を受けたね」と言う昇太師匠に「金に目がくらんで」と一之輔師匠。 新作派じゃないし売れっ子で時間もないのにえらいよなー。これが最終回なのはさみしいなー。

一之輔師匠「らくだの子ほめ」
「らくだ」の前に「らくだの子ほめ」!
これ、前に見たことがあるんだけど、始まった瞬間に「らくだだ!!」と客席が期待したら「みなさんが思ってるような噺じゃありませんよ」と言ったのがおかしかったんだよなぁ。
もう一度見たいと思っていたのでうれしい。

らくだが半次に世辞をならって酒をご馳走してもらおうと出かけていくんだけど、お世辞もやたらとドスが聞いてて怖いし、まわりの人たちもあまりにも怖がってるので世辞を言われてうれしくて、じゃなく、恐怖で財布を差し出していく…。
年を褒めようと町内の45歳を集めるんだけど、集められた45歳たちが恐れおののいているのがおかしい。
おやじを殺された屑屋がらくだに「ふぐ」を渡し、これが次にやる「らくだ」の前段になっている。

昇太師匠「オヤジの王国」
この日は野々村議員の号泣会見があって、会社帰りの人たちの中にはこの会見を見てない人が結構いたのだが(私も含め)、これはもうすごいです、ぜひ見てくださいと昇太師匠。「日本のベートーベンもおぼちゃんも吹き飛びました」と。
「ああいう人たちだって最初からだましてやろうとか汚いやじを飛ばしてやろうと思って政治家になったわけじゃないんでしょう、多分。でもやってるうちに麻痺してきちゃって、みんなが使ってるからお金使って当たり前になったり、みんなが野次飛ばすから自分も飛ばしてたらそれだけがクローズアップされちゃって、え?おれ?なんでおれだけ?なんでしょ」
「だからね、もうなにも言っちゃダメ。twitterとかもやっちゃだめ。当たり障りのないことしか言っちゃだめなんですよ」

そして自分が独身でとやかく言われるけどなんの不自由もしてないし結婚してる人を全然羨ましく思わないという話から「オヤジの王国」。
家族から相手にされてないオヤジ。中古だけど念願のマイホームを買って仕事から帰ってきてピンポンを押すけど奥さんは出てきてくれない。
もうなんで出てこないんだ!と怒りながらも慣れたしぐさで鍵を開けると、果たして奥さんは家にいてドラマに夢中になっている。
「夕飯は?」と聞くと「そこにあるわよ」と顎で指し示す。
顎でやるなよ!顎で!と言いながら、電子レンジで温めて食べ始めるのだが、うまいなぁと言って何口か食べて、「おい、これはなんだよ」「なによ」「これはなんだっていってるんだよ」「なんだよじゃないわよ」「だからこれはなんだ」「もう!!ねぎとしらたきを甘辛く煮たものよ」
これには大爆笑。
「ちがうだろ、これ明らかにすき焼きの残りだろう!なんで肉が入ってないんだよ!」
「残りじゃないわよ、甘辛く煮たものよ」
「ちくしょー。でもうまい。うまいなぁ。」

そのあと、奥さんも娘も出かけちゃって、悔しいオヤジはすっぽんぽんになるんだけど、それでソファーに座ったり、洗濯機の中に娘の洗濯物と自分のパンツを入れたり、ささやかな復讐(笑)。
ちょっと昭和だけどわかりやすくて面白い。

一之輔「らくだ?」
らくだにおやじを殺された屑屋の復讐物語。
自分があげたふぐでらくだが死んだことを確かめに行った屑屋が、半次に言われて大家のところに行くんだけど、大家が「死んだら仏だ」と言って長屋の連中を連れて悔やみに来る。
実はらくだは寝ていただけで死んでいなくて目を覚ますのだが、半次が「お前まずいから隠れてろ」と言って棺桶の中に隠す。
やってきた長屋の人たちは実はらくだにこういうことをされた…とちょっといい話を披露。その間にも落語の登場人物たちが次々やってくる、というサービスも。
客が帰ってから実はらくだは死んでないと聞かされた屑屋。妹「さくら」の結婚式に行った半次に代わって、らくだが実は死んでないということを長屋の人たちに打ち明けることを半次と約束したのだが、屑屋はらくだに睡眠薬入りの酒を飲ませ眠らせると、長屋の連中と棺桶を担いで焼き場に行って生きたままらくだを焼いてしまう。
戻ってきた半次がそれを知って怒ると、「オヤジの仇だ」という屑屋。
そこへ死神がやってきて、オヤジを生き返らせ、らくだも生き返らせて、ハッピーエンド。

いやぁとにかく長い(笑)。
面白いところもあるんだけど、さすがに長くてだれるのと無理矢理感もあり。
改作に向く噺と向かない噺があるかなぁ。
でも一之輔師匠の普段見られない姿が見られて、ファンとしてはとても楽しい。
最終回だったけど、またこういう企画をやってほしいな。